大切なペンダント

公開日: ちょっと切ない話 | 恋愛

恋人同士(フリー写真)

中学2年生の時、幼馴染のKという女子に恋心を抱いていた。

しかし、Kは俺よりも数倍かっこいい男子と付き合っていた。

俺がかなう相手でもなく、彼女自身がそれを伝えてきたので、複雑な気持ちになった。

しかも、恋愛経験のない俺にいろいろ悩みを相談してきた。

ある日、人気のない公園でKの相談に乗っていた時、Kが彼氏と関係がちょっと危ういと言いだした。

話が一段落したところで、Kが俺のペンダントを取って、

「仲直りってことで、これ彼氏にあげてくるね♪」と言った。

他人のお古を彼氏に渡すなんて、どういうことだ?

その2ヶ月後、Kは車にひかれて死んでしまった。

かなり急なことだったので、その事を聞いた時は、全く動けなかった。

葬式の時も、まだ素直に現実を受け止められなかった。

家に帰った後、どうしても抑えきれず、Kのお母さんにKの部屋を見せてほしいと頼んだ。

Kの部屋に入ってみたら、どこか懐かしい香りがした。

部屋を見ていると、タンスの上に箱があった。

恐らく小さい頃からずっと使っていたんだろう。

そっと開けてみると、中にはちっちゃな消しゴムや鉛筆、友達とピースしている写真などが、沢山入っていた。

そして、俺のあの時のペンダントがあった。

よく見てみると、消しゴムの一部や鉛筆の端っこには、俺の名前がうっすらと残されていた。

思わずドキッとした。

もしかして……と思った瞬間、急に涙が溢れてきた。

止められやしなかった。

関連記事

夫婦の重ねる手(フリー写真)

妻からの初メール

不倫していた。 4年間も妻を裏切り続けていた。 ネットで出会った彼女。 最初は軽い気持ちで逢い、次第にお互いの身体に溺れて行った。 ずる賢く立ち回ったこともあり…

恋人同士(フリー写真)

天邪鬼な君

関係を迫ると、あなたは紳士じゃないと言われる。 関係を迫らないと、あなたは男じゃないと言われる。 度々部屋を訪れると、もっと一人の時間が欲しいと言われる。 あまり部屋…

空(フリー写真)

生まれつき

私は生まれつき足に大きな痣があり、それが自分自身でも大嫌いでした。 更に小学生の頃、不注意からやかんの熱湯をひっくり返してしまい、両足に酷い火傷を負ってしまいました。 それ…

雪(フリー写真)

季節外れの雪

「ゆきをとってきて…おねがい、ゆきがみたい…」 あなたはそう言って、雪をほしがりましたね。 季節外れの雪を。 ※ あれから何年も時が経ちました。 あなたは、ゆっく…

女性(フリー写真)

見守ってる

昨日、恋人が死んだ。 病気で苦しんだ末、死んだ。 通夜が終わり、病院に置いて来た荷物を改めて取りに行ったら、その荷物の中に俺宛の手紙が入っていた。 そこには、 …

ブランコ(フリー写真)

母ちゃんの記憶

母ちゃんは俺が4歳の時、病気で死んだんだ。 ぼんやりと憶えている事が一つ。 俺はいつも公園で遊んでいたのだが、夕方になるとみんなの母ちゃんが迎えに来るんだ。 うちの母…

老人の手を握る(フリー写真)

祖父の気持ち

まだ幼い頃、祖父を慕っていた私はよく一緒に寝ていました。 私は祖父のことをとても慕っていたし、祖父にとっては初孫ということもあって、よく可愛がってくれていました。 小学校…

手を握るカップル(フリー写真)

最期の時

俺だけしか泣けないかもしれませんが。 この間、仕事から帰ると妻が一人掛けの椅子に腰かけて眠っていました。 そんなはずは無いと解っていても、声を掛けられずにはいられませんで…

ゲームセンター(フリー写真)

嬉しそうな笑顔を

うちのゲーセンに、毎日のように来ていたお前。 最近全然見ないと思ったら、やっと理由が判ったよ。 この前、お前の母ちゃんが便箋を持って挨拶に来たんだよ。 こちらで良くお…

手を繋ぐカップル(フリー素材)

可愛い彼女がいた

俺には可愛い彼女がいた。 性格は素直でスタイルも良かったが、周囲からは 「え、あの女と付き合ってるの? お幸せに(笑)」 と、よく馬鹿にされた。 彼女は頭が非常…