君への罪滅ぼし
高校二年の終わり、図書館で偶然隣に座った君に、僕は一目惚れをした。
僕はそれから学校が終わると駆け足で図書館に通い、いつも君を事を探していた。
勇気を出して話し掛けてみた事が切っ掛けで、僕は君と友達になる事が出来たんだよね。
君はとても可愛くて、僕なんかじゃ絶対に不釣合いだと思っていたし、側に居られるだけで幸せだった。
彼氏がいる事も判ったから、好きだという気持ちも伝える事が出来ないでいた。
※
そんなある日、僕は君の異変に気付いた。
会った時よりも大分やつれていたから、
「大丈夫?」
と聞くと、君は笑いながら、
「受験のせいで食欲がないだけよ」
と言った。
だから僕もそんなに気には留めていなかったんだ。
※
でも、それから2、3ヶ月も君と会えなくなるだなんて思ってもいなかった。
あの後、眩暈で倒れてそのまま入院をしていただなんてさ。
久しぶりに図書館に来た君は帽子を被っていて、僕は聞いてはいけない質問をしてしまったんだよね。
この時まで、僕は君の病気を知らなかったんだ。
「私、白血病なんだって」
初めは信じられなかったけど、君が帽子を脱いだ姿を見て、僕は全てを理解したんだ。
君はそれからずっと元気がなかったけど、暫くして嬉しそうに僕に話しかけてきた。
「ドナーの人が見つかったの!」
僕もこの時は心から嬉しかった。
でも結局、ドナー側の都合で移植が駄目になってしまったんだよね。
君は泣きながら、こう言ったよね。
「彼氏にも、ドナーにも逃げられちゃった⋯」
そんな君に、僕は勇気を出して告白をしたら、
「こんな私でいいの?」
と承諾してくれた。
その時に初めて僕は、君の手を握ったんだ。
骨と皮だけになっていて、驚く程に細くなっていた。
凄く凄く温かかった。
※
それから1ヶ月後に、君は僕に手紙を残して旅立った。
「あなたと付き合えた1ヶ月間、本当に幸せでした」
苦労して書いたと解る字を見て、僕はただ泣く事しか出来なかった。
一緒の大学へ行こうと約束していたのに、君の願いを叶えられず本当にごめん⋯。
君が居なくなってから、もう8年が経ちます。
大学も卒業し、もう3年。
来月、君と同じ境遇の方に、僕の骨髄を提供する事になりました。
これが僕にとっての『君への罪滅ぼし』だと思っています。