夢への橋渡し

公開日: 仕事 | 心温まる話

繁華街

私はかつて、家の貧しい状況から夜の仕事をしながら大学に通うキャバクラ嬢でした。

私の初めてのお客様は、Yさんという70歳のお爺ちゃん。彼は口下手で、私の話に対して「うん。そうだね」としか返さない人でした。

それでも彼は毎週来店し、私がピンチの時はいつも助けてくれました。深夜0時には静かに店を後にする彼は、他の客のように私に個人的な誘いをかけることは一度もありませんでした。

大学卒業と同時に私は夜の仕事を辞めました。最後の日、Yさんは「お疲れ様」と言ってくれました。

翌日、彼から珍しくメールが来ました。「これからは昼の人間。夜の仕事で出会った人とは関わらないで」という内容でした。彼は私のこれからを思ってくれていたのです。

それ以降、私は彼に年に一度だけ誕生日のメールを送り続けましたが、返信はありませんでした。

そして3年目、Yさんの娘さんからメールが届きました。「父はガンで他界しました」とのこと。彼女は私に父の日記を送ってくれました。

日記には私のことを温かく見守ってくれたYさんの言葉が綴られていました。「彼女は夢に向かって頑張っている。応援していますよ」と。

今、社会人6年目となった私は仕事が楽しく、毎日を一生懸命に生きています。Yさんの応援のおかげで今の私があることを感じています。

天国のYさん、あなたの優しさと応援、心から感謝しています。あなたの期待に応えるよう、これからも頑張ります。

関連記事

ダイビング(フリー写真)

海中の恋

一年前から行きたかったダイビング体験ツアーに行くことになった。 本当は彼女と行きたかったのだが、春が来る前に別れてしまった。 だから仕方なく、男三人で南国へ向かった。 ※…

手繋ぎ

重なる運命のメッセージ

彼と彼女は、いつものツタヤの駐車場で待ち合わせをしました。お互いに重要な話があり、緊張しながら集まった二人は、メールで心の内を伝え合うことにしました。 彼は重い告白をしました。…

モデルルーム

展示場での再会

その日、私たち家族は新築の夢を叶えるべく、住宅展示場を訪れていました。両親と妹、そして私。私だけが初めての参加で、新しい家に対する期待で胸が躍っていました。 展示場の家々はどれ…

ファミレス(フリー写真)

兄妹の情

ファミレスで仕事をしていると、隣のテーブルに親子が座ったんです。 妙に若作りしている茶髪のお母さんと、中学一年生くらいの兄、そして小学校低学年くらいの妹です。 最初はどこに…

親子の手(フリー写真)

自慢の息子

これを書いている私は今、38歳の会社員です。 私は30歳の時にうつ病を患いました。 父が自殺、その後、高校の同級生である友人が自殺。 仕事は忙しく、三ヶ月休みが無い…

花嫁

父と歩む未来

私の幼い日の夢は、お父さんのお嫁さんになることでした。お父さんが大好きで、嫌いと思ったこともなく、他の友達よりもずっと仲が良かったと思います。 しかし、高校3年の時、進学につい…

夏のスイカ(フリー写真)

夏の記憶、婆ちゃんとツトム

昨年の夏、私は高知を訪れた。 熱波が街を包み、頭がクラクラするほどだった。 R439を目指して進む中、中村市の近くに来た。 そこには、一人の婆ちゃんがビーチパラソル…

エルトゥールル号遭難慰霊碑

エルトゥールル号の奇跡

和歌山県の南端に大島がある。その東には、明治三年に出来た樫野崎灯台があり、現在も断崖の上に建っている。 明治23年9月16日の夜、台風が大島を襲った。 ビュワーン・ビュワー…

恋

無音の世界で芽生えた恋

五年前の冬の朝。 出動指令の無線が車内に響き、私たち消防隊は病院火災の現場へ走った。 空気は乾ききり、到着したときには二階の窓から黄炎が噴き上がっていた。 ※ …

クレヨンで描いたハート(フリー写真)

姉の思いやり

当時4歳の長女が、幼稚園の行事の参加記念品で箱に入ったクレヨンのセットを貰って来た。 ところが、事もあろうにその日の夕方、見事に全部折っちゃった。 当然、うちの嫁は激怒。叱…