大切なあなたに花束を
私は介護施設で働いています。
時々おじいちゃんやおばあちゃん宛に、ご家族の方よりお手紙や花束が届きます。
花束を持って行くと、皆さん集まって来ます。
自分かもしれない…と。
メッセージカードが読まれて、花束が誰宛か判明し、その人だけが喜ぶ。
後の人は、がっかりして部屋に戻ります。
※
ある時、大きな花束が届きました。
いつものように、おじいちゃんおばあちゃん達が集まって来ます。
今度は誰宛だろう?
早くメッセージカードを読むように急かされました。
私はそれを読みました。
カードには、
『大切なあなたにこの花束を贈ります』
と書いてありました。
期待する皆さんの輝く顔。
そして最後の宛名を見て、涙が込み上げてきました。
それは、ここにいるおじいちゃん、おばあちゃん達全員からの私への花束だった…。
『○○さんへ
大切なあなたにこの花束を贈ります。
いつもありがとう。
あなたの笑顔で寂しさを忘れました』