みんな同じ
公開日: 心温まる話
俺の娘は今年、4歳になる。
嫁は娘を生んですぐに家を飛び出したので、子供には母親の記憶は無い。
今まで母親のことはあまり話題にせず避けて来たのだが、この間ちょっと考えさせられる出来事があった。
※
仕事の移動中に乗った電車の中でのこと。
俺の隣には、幼稚園くらいの女の子が母親らしい若い女性と一緒に乗っていた。
途中の駅で片腕の無い女性が乗って来て、俺達の向かい側に座った。
女の子が、
「お母さん、何であの人は手ないん?」
と、みんなに聞こえる声で言った。
俺は一瞬ドキっとして、女性と親子から思わず目を逸した。
しかし母親らしき女性は慌てることなく、女の子に向かって言った。
※
母親「いろんな人がいるの。みんなが同じじゃないの。
○○ちゃんにはおじいちゃんとおばあちゃんがいないでしょう?」
女の子「うん、みんなはおるけど、私はおじいちゃんとかおらへんねんなー」
母親「うん、いろんな人がおるけど、おじいちゃんやおばあちゃんがいないのは、○○ちゃんのせいじゃないでしょ?」
女の子「うん、違う。あ、△△ちゃんとこはお父さんおらへんねんで」
母親「そうね、でも、それは△△ちゃんのせいじゃないよね」
女の子「うん、違う!」
母親「だからね、みんなおんなじじゃないの。みんなそれぞれ、持ってるものと、持ってないものがあるんよ。
でもね、持ってないからって、その人は何も悪くないし、他の人と何も違わないんよ」
※
腕の無い女性を含めて、車内に乗り合わせていた人たちは、みんな温かい目でその親子を見守っていた。
思わず目を逸らしてしまった自分が恥ずかしくなった。
自分の娘にも、母親のことを恥じない子に育って欲しいと思った。
この電車の親子は、俺に子育ての大事なことを教えてくれた気がする。