親切の輪

公開日: 心温まる話

終電の車内(フリー写真)

終電の発車間際に切符なしで飛び乗り、車掌さんが回って来た時に切符を買おうと財布を出そうとしたが、財布がなかった。小銭入れもない。

どこかで落としたのだろうか。

途方に暮れたけれども、そのことを正直に車掌さんに言いました。

「すみません。明日、必ず営業所まで行きますから、今日は乗せてください」

ところがこの車掌さん、よほど虫の居所が悪かったのか許してくれない。

次の駅で降りろ、と言うのです。

次の駅で降りても家に帰る手段はない。

ホームで寝るにしては、北海道の夜は寒過ぎる。

どうしようもなくて困っていたら、横に座っていた同じ年格好の中年の男性が回数券をくれたんです。

お礼をしたいからと言って、その男性に名前や住所を尋ねたけど、ニコニコ手を振って教えてくれない。

最後は借りたことを忘れて、なぜ教えてくれないのかと文句を言ったら、次のような話をしてくれたんです。

「実は私もあなたと同じ目に遭って、傍に居た女子高校生にお金を出してもらったんです。

その子の名前を何とか聞き出そうとしたけど教えてくれない。

『おじさん、それは私のお小遣いだから返してくれなくて結構です。

それより、今おじさんがお礼だと言って私に返したら、私とおじさんだけの親切のやり取りになってしまいます。

もし私に返す気持ちがあったら、同じように困った人を見かけたらその人を助けてあげてください。

そしたら、私の一つの親切がずっと輪になって北海道中に広がります。

そうするのが、私は一番嬉しいんです。

そうするようにって私、父や母にいつも言われてるんです』

と私に話してくれました」

色鉛筆で描かれた線(フリー写真)

弟の物語

私の家族は、父、母、私、弟の四人家族。 弟がまだ六歳の時の話。 弟と私は十二才も歳が離れている。凄く可愛い弟。 だけど私は遊び盛りだったし、家に居れば父と母の取っ組み…

桜(フリー写真)

娘を思う父の心

この前、娘が大学受けたんですよ、初めてね。 で、生まれて初めて娘の合格発表を迎えた訳ですわ。正直、最初は合格発表を見に行った娘の電話を待つのなんて簡単だと思ってたのよ。みんな普通…

黒猫(フリー写真)

ぬこさま

今年のGW明けの頃のこと。 前の日から上司の機嫌が悪く、八つ当たりばかりされていた。 その日も私の力ではどうしようもないことで怒られた挙句、酷い言葉を浴びせられたり身体的欠…

イチゴのショートケーキ(フリー写真)

イチゴショートと女の子

俺がケーキ屋で支払いをしていると、自動ドアが開いて、幼稚園児くらいの女の子が入って来た。 女の子は一人で買い物に来たらしく、極度の緊張からか、頬を赤く染め真剣な眼差しで店員に …

日記帳(フリー写真)

天国の恩人

私はキャバクラ嬢でした。 家がとても貧乏で、夜に働きながら大学へ行きました。 そんな私の初めてのお客様。 Yさん、70歳のお爺ちゃんです。 彼はとても口下手で、…

家族の手(フリー写真)

幸せな家族

私は長女が3歳になった時に長男を出産した。 長男が生まれるまで、私と長女は殆どずっと一緒に居た。 夫が居ない平日の昼間は、二人だけの時間だった。 でも子供が二人になる…

手を握る(フリー写真)

仲直り

金持ちで顔もまあまあ。 何より明るくて突っ込みが上手く、ボケた方が 「俺、笑いの才能あるんじゃね」 と勘違いするほど(笑)。 彼の周りには常に笑いが絶えなかった…

阿佐ヶ谷七夕まつりの短冊(フリー写真)

人のために出来ること

ある家庭に、脳に障害のある男の子が生まれた。 そして数年後、次男が誕生した。 小さい頃、弟は喧嘩の度に 「兄ちゃんなんて、バカじゃないか」 と言った。それを聞い…

渋滞(フリー写真)

迷彩服のヒーロー

一昨年の夏、私は5歳の息子を連れて、家から車で1時間の所にある自然博物館の昆虫展へ向かっていました。ムシキングの影響で、息子はとても楽しみにしていました。 あと数キロと言う地点で…

親子(フリー写真)

お袋からの手紙

俺の母親は俺が12歳の時に死んだ。 ただの風邪で入院してから一週間後に、死んだ。 親父は俺の20歳の誕生日の一ヶ月後に死んだ。 俺の20歳の誕生日に、入院中の親父から…