触れる魔法

公開日: 仕事 | 心温まる話

メリーゴーランド

私たちの前を、目の見えない夫婦が手を取り合って歩いていました。

彼らはそれぞれ白杖を携えており、ディズニーランドのキャストが優しく案内しながら、彼らと並んで歩いていました。

そして、夢のひと時が訪れます。ミッキーマウスに会うための特別な部屋に一歩足を踏み入れたとき、彼らの番が来ました。

キャストは温かい声で彼らに告げました。

「こちらがミッキーの耳ですよ〜!」

ミッキー自身が穏やかに彼らの手を取り、自分の大きな耳へと導きました。

夫婦は手で優しくミッキーの耳の形を確かめ、幸せそうに頷いていました。

でもミッキーの思いやりはそれだけではありませんでした。

彼は彼らの手を自らの鼻へと移し、夫婦の笑顔をさらに輝かせました。

そして、何度も彼らを抱きしめ、愛情を込めたキスをしました。

夫婦が部屋を後にする時まで、ミッキーは彼らを温かく見送りました。

私は、この心温まる光景を目の当たりにして、感動のあまり涙がこぼれ落ちました。

私が涙を流していると、ミッキーが静かに近づき、慈しみのこもった手で私の頭を撫でてくれました。

この小さな仕草が、言葉にはできないほどの愛と優しさを伝えていました。

関連記事

蛍(フリー写真)

蛍は亡くなった人の魂

祖父が死んで、もう12年になる。 幼い頃から、 「蛍は亡くなった人の魂だから、粗末に扱うな」 と祖父に教えられてきた。 ※ 去年の8月15日の夜、父と俺とで家族総…

天国(フリー写真)

思いやり

地獄にある食堂のテーブルの上には、沢山の美味しそうなお料理が乗っています。 食事の時間になると、地獄に居る人間達が食堂に続々と入って来ます。 彼らはいつも愚痴ばかりで不平…

バー(フリー写真)

痛みを知る者

自分でも理由は判らないが、気が付けば仕事のやる気を失くしていた。 会社を欠勤し、それが数日続いたある日の夜、強面の上司が自宅に来た。 最後通告かなと思いながら、上司の行きつ…

ビル

予期せぬ守り神

内定式で初めて彼女と出会った。彼女は私たちの同期だった。 彼女は聡明の代名詞のような人だった。学生時代の論文で賞を受けるほどの才女で、周囲からは期待の新星と見なされていた。 …

豚骨ラーメン(フリー写真)

父の記憶

俺の父は、俺が6歳の時に死んでしまった。 ガンだった。 確か亡くなった当時の年齢は34歳だったと思う。 今思えばかなりの早死にだった。 呆気なく死んでしまった…

信号(フリー写真)

素直な感謝の気持ち

今日、近所の交差点で車に乗り信号待ちをしていると、前方の右折車線でジリジリ前進している車がいた。 明らかに『信号が青になった瞬間に曲がっちまおう』というのが見え見え。 この…

駄菓子屋(フリー写真)

駄菓子屋に集結したヒーロー

近所に古い駄菓子屋がある。 経営しているのは、お婆ちゃん一人だけ(お爺ちゃんは5年程前に病気で亡くなってしまった)。 いつもニコニコしていて、とても優しいお婆ちゃんで、お金…

桜

再会と再出発

3年前、私は桜が開花し始める頃に自殺を考えていました。失恋、借金、会社の倒産と様々な問題が重なり、絶望していたのです。両親とも絶縁状態で、孤独を感じていました。 最後に何か美味…

放課後の教室

恩師の愛情

私は高校2年生の時にうつ病になった。 切っ掛けは、2年半付き合った彼氏に振られたことと、友達から仲間はずれにされるようになったことだと思う。 毎日、泣いていた。 プ…

セイコーマート(フリー写真)

小さな子供達の友情

俺はセイコーマートで働いて三年目になる。 いつも買い物に来る小さな子の話を一つ。 その子は生まれつき目が見えないらしく、白い杖をついて母親と一緒に週二、三度うちの店を訪れる…