直立不動の敬礼

自衛隊員の方々(フリー写真)

2年前、旅行先での駐屯地祭での事。

例によって変な団体が来て、私は嫌な気分になっていた。

するとその集団に向かって、一人の女子高生とおぼしき少女が向かって行く。

少女「あんたら地元の人間か?」

団体「私達は全国から集まった市民団体で…云々」

少女「で、何しに来たんや?」

団体「憲法違反である自衛隊賛美に繋がる…云々」

少女「私は神戸の人間や。はるばる電車に乗って何しにここまで来たか解るか?」

団体「…?」

少女「地震で埋もれた家族を助けてくれたのは、ここの部隊の人や。

寒い中ご飯を作ってくれて、風呂も沸かしてくれて、夜は夜で槍を持ってパトロールしてくれたのも、ここの部隊の人や。

私は、その人達にお礼を言いに来たんや。

あんたらに解るか?

消防車が来ても通り過ぎるだけの絶望感が。

でもここの人らは歩いて来てくれはったんや…」

最初、怒鳴り散らすように話し始めた少女の声は、次第に涙声に変わって行った。

あまりにも印象的だったので、今でもはっきり憶えている。

団体は撤退。

彼女が門をくぐった時、守衛さんが彼女に社交辞令の軽い敬礼ではなく、直立不動のまま敬礼していた。

関連記事

女性(フリー写真)

見守ってる

昨日、恋人が死んだ。 病気で苦しんだ末、死んだ。 通夜が終わり、病院に置いて来た荷物を改めて取りに行ったら、その荷物の中に俺宛の手紙が入っていた。 そこには、 …

母の絵(フリー写真)

欲しかったファミコン

俺の家は母子家庭で貧乏だったから、ファミコンが買えなかった。 ファミコンを持っている同級生が凄く羨ましかったのを憶えている。 小学校でクラスの給食費が無くなった時など、 …

浜辺で子供を抱き上げる父親(フリー写真)

不器用な親父

俺の親父は仕事一筋で、俺が小さな頃に一緒にどこかへ行ったなんて思い出は全く無い。 何て言うのかな…俺にあまり関わりたがらないような人って感じ。 俺は次男だったんだけど、兄貴…

結婚式(フリー写真)

前彼の祝福

学生時代、彼氏を事故で亡くした。 引き摺りまくって、もう新しい彼氏も結婚も要らないと荒み、誘いも蹴り告白も断った。 お一人様の老後を設計していたのだけど、ある日いきなりご縁…

電車内から見る駅のホーム(フリー写真)

おとうさんという言葉

その日は約束の時間ぎりぎりに、舞浜駅のホームから階段を降りた。 雑踏の中には元妻と、ミニリュックを背負った小学3年生の息子が待っていた。 半年ほど見ない間に一回り大きくなっ…

雲海

空の上の和解

二十歳でヨーロッパを旅していた時の実話です。ルフトハンザの国内線でフランクフルト上空にいた時、隣に座ったアメリカ人の老紳士に話しかけられました。日本の素晴らしさについて談笑していると…

空(フリー写真)

見守ってくれた兄

我が家の仏壇には、他より一回り小さな位牌があった。 両親に聞いた話では、生まれる前に流産してしまった俺の兄のものだという。 両親はその子に名前(A)を付け、事ある毎に …

教室

両親への感謝

私が考える教育の究極の目的は「親に感謝し、親を大切にする」ことです。高校生たちは、しばしば自分たちが自力でここまで来たと錯覚しています。彼らがどれほど親に支えられて育てられたか、その…

サイコロ

おばあちゃんの願い

子どもの頃、家庭の事情でおばあちゃんの家に預けられた俺。見知らぬ土地に来て間もないこともあり、友達はおらず、孤独を感じていた。 その寂しさを紛らわせるため、ノートに自分で考えた…

景色

忘れないでね

嫁が激しい闘病生活の末、若くして亡くなった。その5年後、こんな手紙が届いた。どうやら死期が迫った頃、未来の俺に向けて書いたものみたいだ。 ※ Dear 未来の○○、元気で…