綺麗なお弁当

公開日: ちょっと切ない話 | 悲しい話

花(フリー写真)

遠足の日、お昼ご飯の時間になり、担任の先生が子供たちの様子を見回って歩いていた時のことです。

向こうの方でとても鮮やかなものが目に入って来ました。

何だろうと思い近寄って見ると、小学三年生の女の子のお弁当でした。

中を覗いて見ると、お花でびっしりのお弁当箱でした。

実はその女の子の家庭は、お母さんとお父さんとその女の子の三人の生活でした。

しかし遠足の数週間前に、お母さんは交通事故で亡くなってしまったのです。

それ以来、お父さんと女の子の生活が始まりました。

お父さんの仕事はタクシーの運転手さん。一日交代の勤務で、遠足の当日は勤務の日でした。

でも、お父さんは炊飯器でご飯だけは炊いてくれていました。

女の子は一人で起きてご飯を弁当箱に詰めます。おかずは自分で作らなければなりません。

家にあるのは梅干と沢庵。そこで、おかずを作り始めます。

小学三年生の女の子に出来たのは、ぐじゃぐじゃの卵焼きだけでした。

そのぐじゃぐじゃの卵焼きを白いご飯に入れた時、女の子はお母さんが生きていた頃のことを思い出します。

お母さんが生きていた頃は、とても素敵なお弁当を作ってくれました。

それを思い出すと同時に、今日持って来るお友達のお弁当箱が気になり始めます。

お母さんが作ってくれる可愛らしい綺麗なお弁当。

そう思って自分のお弁当箱を覗いた時、真っ白いご飯に黄色のぐじゃぐじゃの卵焼きだけ。

女の子は思わずお母さんの仏壇の前へ行き、仏壇に差してあったお花を千切って持って来ました。

そして自分のお弁当箱に入れ、びっしりとお花で埋め尽くしたお弁当箱を持って来ていたのです。

この女の子の担任は、遠足から帰ると大声で泣きました。

女の子の生活を十分知っていた自分であったはずなのに、実は知っていたつもりでしかなかった悔しさで、泣き続けたのです。

月明かり(フリー写真)

お月さんの下で

昨日、彼女の家の犬が死んだ。 彼女の家は昔、彼女の兄貴が高校生という若さで自殺してから、両親も彼女もうつ病になって酷い状態だったらしい。 そんな時に引き取って来た犬だったそ…

犬(フリー写真)

サチへ

前の飼い主の都合で初めて我が家に来た夜、お前は不安でずっと鳴いていたね。 最初、お前が我が家に慣れてくれるか心配だったけど、少しずつ心を開いてくれたね。 小学生の時、空き地…

赤ちゃん(フリー写真)

生まれてくれてありがとう

子供が2人居る。 でも本当は、私は3人の子持ちだ。 ※ 18歳の春に娘が生まれた。 結婚してくれると言っていた父親は、結局認知すらしてくれなかった。 若い私にとっ…

母(フリー写真)

母のビデオテープ

俺は小さい頃に母親を亡くしている。 それで中学生の頃は恥ずかしいほどグレた。 親父の留守中、家に金が無いかタンスの中を探していると、一本のビデオテープがあった。 俺は…

手紙(フリー写真)

亡くなった旦那からの手紙

妊娠と同時に旦那の癌が発覚。 子供の顔を見るまでは…と頑張ってくれたのだけど、ちょっと間に合わなかった。 旦那が居なくなってしまってから、一人必死で息子を育てている。 …

子供の寝顔(フリー写真)

お豆の煮方

交通安全週間のある日、母から二枚のプリントを渡されました。 そのプリントには交通事故についての注意などが書いてあり、その中には実際にあった話が書いてありました。 それは交通…

ゴルフ場(フリー写真)

数奇な恋の話

俺が惚れた子の話をします。 俺はもう既に40歳前を迎えた独身男だ。 彼女も5年近く居ない。 そんな俺が去年の5月頃に友人に誘われ、ゴルフを始めた。 ゴルフなんて…

阪神・淡路大震災(フリー写真)

色褪せたミニ四駆

小学4年生の時の1月15日、連休最初の日だったかな。 いつものメンバー5人で、俺の住んでいたマンションで遊んでいた。 当時はミニ四駆を廊下で走らせ、騒いでは管理人さんによく…

公園(フリー写真)

一緒に遊んでくれた女の子

これは私が小学三年生の頃の話です。 両親が離婚して母子家庭となり、一人で居るのが怖かった私は、しょっちゅう児童館へ行っていました。 学童保育という手もあったのですが、当時は…

ハート(フリー素材)

残りの一年

彼女に大事な話があるからと呼び出した。 彼女も俺に大事な話があると言われて待ち合わせ。 てっきり別れると言われるのかと思ってビビりながら、いつものツタヤの駐車場に集合。 …