小さな勇気、大きな友情

公開日: 友情 | 心温まる話

スーパー

私はセイコーマートで働いて三年目になります。

店にはよく来る小さな常連客がいます。その子は生まれつき目が見えず、白い杖をついて母親と共に週に二、三度店を訪れます。

ある日、その子が一人で店の入口に立っていました。入口のドアが引き戸だったため、私はドアを開けてあげようとしました。

その時、同年代の子供二人が通りかかり、次のように言いました。

「お前さぁ、目見えねぇんだろ? 素直に親が帰って来るまで、家でおとなしく留守番でもしてろよ。バカだなぁ」

私はこの言葉に憤りを感じました。障害を持つ人への冷たい言葉は許せないからです。

子供たちに何か言おうと入口に向かったその時、一人が突然言いました。

「ほら、先に入れよ。ドア開けといてやるからよ」

そして、彼らはその子の手を取りました。

「何買いに来たんだ?」 と一人が尋ねると、その子は返事しました。

「お母さんがすごく熱があるの。だから水枕に入れる氷を買いに来たの」

子供たちはその子をレジまで連れて行き、氷を持って来ました。

「398円です」と私が伝えると、二人は快く応じました。

「いいよ、俺が出しといてやるよ!その代わり、お前のお母さんが良くなったら俺たちと遊べよな!」

彼らは会計を済ませ、その子の家まで同行したようです。

一方は氷を持ち、もう一方はその子の手を引いて帰って行きました。

その日、私は小さな子供たちの間に芽生えた真の友情に心から感動しました。彼らの小さな勇気と大きな心が、困難な時でも互いを支え合うことの大切さを教えてくれたのです。

関連記事

夫婦

新しい一年目

俺と嫁は、高校のときからの付き合いだった。きっかけは、同じ委員会に所属したことだった。 高校の文化祭で、俺と嫁は同じ仕事を任され、準備から後片付けまで約一ヶ月間、一緒に作業した…

炊き込みご飯

愛のレシピ

私が子供の頃、母が作る炊き込みご飯は私の心を温める特別な料理でした。 明言することはなかったが、母は私の好みを熟知しており、誕生日や記念日には必ずその料理を作ってくれました。 …

ナースステーション(フリー写真)

最強のセーブデータ

俺が小学生だった時の話。 ゲームボーイが流行っていた時期のことだ。 俺は車と軽く接触し、入院していた。 同じ病室には、ひろ兄という患者が居た。 ひろ兄は俺と積極…

ご縁の糸(フリー写真)

風変わりなアピール

30歳になる少し前に離婚した。 その一年半後に現在の妻を紹介された。 高校を出て7年間、妻は俺の祖母の兄が営む田舎町の店舗に勤めていた。 安い給料なのに真面目に働く良…

虹(フリー写真)

道路に架かった虹

昨日、犬の散歩をしていた時の事。 20代後半くらいの男性が二人、作業着でマンホールを調べていた。 少し立ち止まって見ていたら、前から女子中学生が泣きながら歩いて来た。 …

教室(フリー写真)

先生がくれた宝物

私がその先生に出会ったのは中学一年生の夏でした。 先生は塾の英語の担当教師でした。 とても元気で、毎回楽しい授業をしてくれました。 そんな先生の事が私はとても大好き…

駅

再生の贈り物

私には本当の親がいない。物心ついたときにはすでに施設で育てられていました。親が生きているのか、死んでいるのかもわからないまま、私はただ普通に生きてきました。 施設での唯一の家族…

婚約指輪(フリー写真)

玩具の指輪

高校生の頃の話。 小さな頃から幼馴染の女がいるのだが、その子とは本当に仲が良かった。 小学生の頃、親父が左手の薬指に着けていた指輪が気になって、 「何でずっと着けてる…

自衛隊員の方々(フリー写真)

直立不動の敬礼

2年前、旅行先での駐屯地祭での事。 例によって変な団体が来て、私は嫌な気分になっていた。 するとその集団に向かって、一人の女子高生とおぼしき少女が向かって行く。 少女…

景色

忘れないでね

嫁が激しい闘病生活の末、若くして亡くなった。その5年後、こんな手紙が届いた。どうやら死期が迫った頃、未来の俺に向けて書いたものみたいだ。 ※ Dear 未来の○○、元気で…