靖国での再会

公開日: 友情 | 心温まる話 | 戦時中の話

戦時中

俺の爺さんは戦地で足を撃たれたらしい。

撤退命令が出て皆急いで撤退していたのだが、爺さんは歩けなかった。

隊長に、「自分は歩けない。足手まといになるから置いて行って下さい」と言うと、黙って何時間も背負って逃げてくれたらしい。

撤退場所に着いて応急手当が終わり、お礼を言おうと隊長を探すと、上官は再び出撃の準備をしていたらしい。

「ありがとうございました。このご恩は一生忘れません」と泣きながら言うと、隊長が「お前は怪我をしているから日本に帰れる。俺は今から祖国の為に戦って来る。多分生きて日本には帰れないだろう」と言った。

爺さんは、「自分もここに残ります」と言いかけたところで、「泣く事は無い。死ねば日本に帰れる。靖国で会おう」と上官は言っていたらしい。

爺さんの足には酷い傷跡が残っていたのだが、その傷を見る度にその隊長を思い出すらしい。

爺さんはもう亡くなってしまったのだけど、亡くなる少し前に「死んだら隊長に会える。やっときちんとお礼を言える。随分遅くなってしまった」と呟いていたよ。

関連記事

航空自衛隊の戦闘機(フリー写真)

一生の宝物

航空自衛隊に所属する先輩から聞いた話。 航空自衛隊では覚えることが山ほどあり、毎日24時まで延灯願いを出して勉学に励んでいた。 座学(学課)でも指定の成績を取れないとパイ…

海

あの日の下り坂

夏休みのある日、友達と「自転車でどこまで行けるか」を試すために小旅行に出かけた。地図も計画もお金も持たず、ただひたすら国道を進んでいった。 途中に大きな下り坂が現れ、自転車はま…

手紙(フリー写真)

亡くなった旦那からの手紙

妊娠と同時に旦那の癌が発覚。 子供の顔を見るまでは…と頑張ってくれたのだけど、ちょっと間に合わなかった。 旦那が居なくなってしまってから、一人必死で息子を育てている。 …

手をつなぐ男女(フリー写真)

恩師が繋いでくれた友情

私が中学三年生だったあの夏、不登校でオタクな女の子との友情が始まりました。 きっかけは担任の先生からの一言でした。 「運動会の練習するから、彼女を呼びに行ってほしい」 …

ファミレス

兄妹の絆

ファミリーレストランでの仕事中、私の隣のテーブルに親子が座った。 お母さんは若作りした茶髪で、中学生くらいの息子と小学生の妹を連れていた。 初めはただの普通の家族だと思っ…

犬(フリー写真)

大切な家族

家で可愛がっていた犬が亡くなって、もう何年経っただろう…。 まだ私も子育て中で、小さい子供を2人育てていたので毎日がバタバタだった時のことだ。 旦那が、番犬になるし子供たち…

女の子の後ろ姿(フリー写真)

温かい家庭

兄家族が俺達の家にやって来て、長女を押し付け引っ越して行った。 兄も兄嫁も甥っ子だけが生き甲斐みたいなところがあったんだよね。 甥っ子は本当に頭が良かったんだ。 勉強…

カップル

光の中での再会

一昨年の今日、僕は告白をしました。それは、生まれて初めての告白でした。 彼女は、全盲でした。 その事実を知ったのは、彼女がピアノを弾いているのを聴いて、深く感動した直後の…

電車の車内(フリー写真)

みんな同じ

俺の娘は今年、4歳になる。 嫁は娘を生んですぐに家を飛び出したので、子供には母親の記憶は無い。 今まで母親のことはあまり話題にせず避けて来たのだが、この間ちょっと考えさせら…

結婚式

父娘の絆

土曜日の太陽が、一人娘の結婚式を温かく照らしていた。 私が彼女たち母娘と出会ったのは、私が25歳の時でした。妻は33歳、娘は13歳というスタートでした。 事実、彼女は私の…