変わらないもの

公開日: ちょっと切ない話 | 友情

友情(フリー写真)

俺たち小学校から高校までずっと一緒だったよな。

高卒後、俺は就職、お前はフリーター。

学歴社会の昨今、

「俺たちゃ負け組じゃねぇよな!がんばろうぜ!」

と、よく鼓舞し合ってたな。

25歳になった頃。

俺が初めての役職に就いた日、嬉しくてすぐに連絡したよな?

その時、お前の言った言葉。

「そんな普通な生き方、楽しいか?」

俺は悲しくて、頭に来て言ったよ。

「25歳でフリーターやってるお前には解らねぇよ」

あの日から、俺たちは連絡を取らなくなって、もう14年か…。

お互い39歳なんてオッサンだな。

実は、来年娘が中学生になるんだ。

俺もそれなりの役職にステップアップしたよ。

「お前はどうだ?」

なんて聞かないよ。

その身なりをみれば、久々の訪問理由も想像がつく…。

何も聞かないさ。

持って行けよ。

普通の40歳の給料2ヶ月分は入ってるからさ…。

「…スマン」

お前の呟きも聞こえないふりをするよ。

さあ、帰ってくれ。

金は返さないでいいから…。

家族に見られたくないんだ。

こんな姿の親友がいるなんて知られたくない。

近所の目もある…。

何度も振り返り、頭を下げて小さくなって行くお前を見ながら思った。

俺はいつから人目を気にするようになったのかな…。

親友を厄介者扱いするような人間になったのかな。

俺たちゃ負け組じゃねぇよな。

がんばろうぜ。

関連記事

教室(フリー写真)

大切な幼馴染

私には、大好きな男の子がいた。 その子は幼馴染で、小さな頃からずっと一緒だった。 私はいつも支えてくれた彼が大好きだった。 でも、彼は自ら命を絶った。 首を吊…

ビル

隣の席の喪失と救い

ある日、私の隣に座っていた会社の同僚が亡くなりました。彼は金曜日の晩に飲んだ後、電車で気分が悪くなり、駅のベンチに座ったまま息を引き取ったのです。55歳という若さでした。 私た…

手を繋ぐ夫婦(フリー写真)

最愛の妻が遺したもの

先日、小学5年生の娘が何か書いているのを見つけた。 それは妻への手紙だったよ。 「ちょっと貸して」 と言って内容を見た。 まだまだ汚い字だったけど、妻への想いが…

親子(フリー写真)

お袋からの手紙

俺の母親は俺が12歳の時に死んだ。 ただの風邪で入院してから一週間後に、死んだ。 親父は俺の20歳の誕生日の一ヶ月後に死んだ。 俺の20歳の誕生日に、入院中の親父から…

手繋ぎ

重なる運命のメッセージ

彼と彼女は、いつものツタヤの駐車場で待ち合わせをしました。お互いに重要な話があり、緊張しながら集まった二人は、メールで心の内を伝え合うことにしました。 彼は重い告白をしました。…

シャム猫(フリー写真)

父親と猫のミル

家にはもう十年飼っていた猫が居たんだ。 家の前は昔、大きな広場で、その猫はその広場の片隅にある車の中で寝ていた子猫だった。 俺と姉ちゃんでその猫を家の庭まで連れ帰って来ちゃ…

家族の影(フリー写真)

家族で笑った思い出

数年前に、実家の一家の大黒柱である父が倒れた。 脳梗塞で、一命は取り留めたものの麻痺が残ってしまった。 母は親戚(成年後見人)に上手いことを言われて離婚させられた。 …

母(フリー写真)

私を大学に通わせてくれた母へ

あなたは私を産むまでずっと父の暴力に苦しんでいましたね。 私が産まれた時、あなたは泣きながら喜んだそうですね。 私が一才の誕生日に、借金を抱えたまま父が自殺しましたね。 …

新婦(フリー写真)

父が隠していた物

友人(新郎)の結婚披露宴での出来事。 タイムスケジュールも最後の方、新婦の父親のスピーチ。 ※ 「明子。明子が生まれてすぐ、お前のお母さんは病気で亡くなりました。 お前…

カップル

君への罪滅ぼし

高校二年の終わり、図書館で偶然隣に座った君に、僕は一目惚れをした。 僕はそれから学校が終わると駆け足で図書館に通い、いつも君を事を探していた。 勇気を出して話し掛けてみた…