天国のおかあちゃんへ

公開日: ちょっと切ない話 | 夫婦 | 家族

天国(フリー素材)

もう伝わらないのは解っているけど、生きている内に伝えられなかった事を今、伝えるね。

まずは長い闘病生活、お疲れ様。最後まで絶対に諦めなかったおかあちゃんの姿、格好良かったよ。

子供達のために頑張ったんだよね。

俺は先週の木曜日に先生に呼ばれて、おかあちゃんがもう長生き出来ない事を聞いたんだ。

でも左半身が動かなくなっても諦めないおかあちゃんを見ていたら、そんな事は伝えられなくて、逆に希望を持たせるような事を言ってごめんよ。

その前くらいに、俺もいっぱいいっぱいで、おかあちゃんに

「大変なのはお前だけじゃないんだ」

と言った事があったよね。

今でも後悔しています。

最期には意識が無かったみたいだったけど、お父ちゃんの話、聞こえてた?

色んな思い出を話したんだけどなあ。

通夜と葬式には沢山の友達が来ていたよ。

最期も俺の他に、友達四人に看取ってもらったしね。

俺だけのおかあちゃんじゃないんだなって、正直やきもちを焼きました。

結婚してからの六年間、色んな思い出アリガトね。

生きていれば昨日、33歳の誕生日だったね。ケーキを買って来たの分かってくれた?

子供達はまだ解っていないみたいだし、じいさんやばあさんは相変わらずです。

偶には夢でも良いから会いに来てください。

でも友達が沢山居たから、俺の所に来るのはまだ先になるのかな?

二年間、凄く苦しんだ分、暫くゆっくり休んでください。

今まで本当にアリガトね。

大好きだよ。

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