失われた愛と再生

土砂崩れ

幼い頃から施設で育った私は、小さいときからおじいちゃんに引き取られ、そこで三人の兄弟に出会いました。9歳の元気なL、12歳の大人っぽいS、そして仏頂面だが優しいA。私たちは親がいない共通の境遇を持ち、おじいちゃんのもとで本当の家族のように育ちました。

ある年、Sが突然亡くなり、私たちはその現実を信じられずにいました。おじいちゃんから死を告げられ、普段泣かないAも大泣きしました。

時が経ち、Aが仕事のために家を出ることになり、私も彼について行きました。Aとの生活は新鮮で、やがて彼と深い愛情を育んでいきました。近所にはAの同僚や会社の社長さんが住んでおり、私たちは彼らに囲まれながら幸せな日々を送っていました。

そして、ある時、会社の旅行で山に行くことになりました。私とたまたま遊びに来ていたLも一緒に参加しました。しかし、その楽しいひと時は突然悲劇に変わりました。

Aと社長さんは私のネックレスを取りに行った際に山で発生した土砂崩れに巻き込まれ、命を落としました。彼らの最後の行動は、私にとって忘れられないものとなりました。

それから数年後、私は養子に迎えてくれた夫婦の支えを受けて、少しずつ立ち直りました。私は今、二人の子供たちの母として、再び笑顔を取り戻し始めています。これらすべては、失われた愛と、それを乗り越えた後に見つけた新たな希望の物語です。

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