お金以上のもの

公開日: 仕事 | 兄弟姉妹 | 家族 | 心温まる話 |

カラオケのマイク(フリー写真)

パパ、ママ、小学生の三姉妹の仲良し五人家族。

ある日、ママが交通事故で亡くなってしまいました。

慣れない家事にお父さんも奮闘。

タマゴ焼きを焦がしたり、洗濯物を皺だらけにしたり…。

失敗しながらも笑顔で幼い三姉妹を育てます。

そんなお父さんのささやかな楽しみは、お風呂に入りながら唄うこと。

いつも「カラオケボックスで思い切り唄いたいな~」と言っていました。

お父さんの誕生日の数日前、姉妹は三人で集めた貯金箱を持って、通学路の途中にあるカラオケボックスへ。

「予約できますか?」

受付に居た若い女性店員は、怪訝な顔で店長を呼びます。

この店長さん、いつも通学途中の三姉妹を見守っていました。

「お母さんは?」

「死んじゃった!お父さんしかいないの…」

「お父さんの誕生日会をしたいんです!」

現在と違い当時のカラオケボックスは高かったのです。

持参したお金では到底足りません。

全てを悟った店長は、

「解りました。協力しますよ」

と言ってくれました。

誕生日会当日、早くから個室を貸してくれたので、三姉妹揃って飾り付け。

時間が来たのでお父さんを呼びに行く三姉妹。

幼い三姉妹とお父さんの誕生日パーティーが始まります。

お父さんも唄ってビールを飲んで…。

三姉妹もアニメの曲を唄ったり、踊ったり、楽しい時間を過ごします。

パーティーが終わって帰り際、お父さんはフロントへ精算に行きます。

お父さんも、三姉妹の持参した金額で不足なのは、もちろん知っていたのです。

そこで対応した店長さん。

「お会計は終わっています。娘さんから頂きました」

「足りないでしょう?」

「いいえ!充分頂きました。そしてお金以上のものを私たちも娘さんから頂きました。こちらこそありがとうございます」

楽しそうに帰る家族を見送った後、店長と従業員は号泣。

お父さん、三姉妹、店長と従業員、みんな幸せな時間を過ごしたそうです。

関連記事

バラの花束(フリー写真)

大きなバラの花束

接客を何年か担当してくれていた優秀な女性スタッフが、その店を辞めることになった。 店長は、一生懸命仕事をしてくれた彼女に何かお礼がしたかった。 いよいよ彼女の最後の出勤の日…

南国の空

背中を押してくれた人

仕事でどうしようもないミスをしてしまい、次の日に出勤するのがどうしても嫌で、気持ちが塞ぎ込んでいた時のことだった。 家に帰る気にもなれず、仕事帰りに普段は使わない電車に乗って、…

カフェ

遠くて近い二人

私はファミリーレストランでのひとときを静かに過ごしていました。 目の前のテーブルには、スーツ姿の中年の男性と、鮮やかな制服の女子高生が座っていました。 男性は痩せており、…

婚約指輪(フリー写真)

玩具の指輪

高校生の頃の話。 小さな頃から幼馴染の女がいるのだが、その子とは本当に仲が良かった。 小学生の頃、親父が左手の薬指に着けていた指輪が気になって、 「何でずっと着けてる…

窓辺(フリー写真)

病院の窓辺から

ある病院に、頑固一徹で世を拗ねたような患者のお婆さんが居ました。 家族から疎まれていたためでしょうか。看護師さんが優しくしようとしても、なかなか素直に聞いてくれません。 …

受験(フリー写真)

おばあちゃんの愛情

俺の家庭は自分と母親、それとおばあちゃんの三人で暮らしている。 親父は離婚していない。パチンコなどのギャンブルで借金を作る駄目な親父だった。 母子家庭はやはり経済的に苦し…

吹雪(フリー写真)

ばあちゃんの手紙

俺の母方のばあちゃんは、いつもニコニコしていて、かわいかった。 生んだ子供は四姉妹。 娘が全員嫁いだ後、長いことじいちゃんと二人暮らしだった。 そして、じいちゃんは2…

家族(フリー写真)

娘への遺言

レミオロメンの「3月9日」という曲が流れる度に、私は泣きそうになります。 両親は、私が10歳の時に事故死しました。 あの日は家族旅行に行っていました。 帰り道、高速…

母と娘

余命3ヶ月の母の“最後のおむすび”

僕がかつて看取った患者さんに、スキルス胃がんを患っていた一人の女性がいました。 余命3ヶ月と診断され、彼女はある病院の緩和ケア病棟に入院してきました。 ※ ある日の…

カップル(フリー写真)

彼女からの涙の告白

彼女との同棲生活が始まって、すでに5年以上が過ぎていました。 そして今、私は彼女にプロポーズをしようとしています。 だけれども、緊張からうまく言葉が出てこないのです。 …