おばあちゃんの願い

公開日: 家族 | 心温まる話 | 祖父母

サイコロ

子どもの頃、家庭の事情でおばあちゃんの家に預けられた俺。見知らぬ土地に来て間もないこともあり、友達はおらず、孤独を感じていた。

その寂しさを紛らわせるため、ノートに自分で考えたスゴロクを書くのに夢中になった。

モンスターや罠を描き加えるたび、おばあちゃんに見せては「ここでモンスターが出るんだよ」と自慢した。

おばあちゃんはいつもニコニコしながら俺の話を聞いてくれ、それが俺にとってはとても嬉しかった。

時が経ち、俺にも友達ができ、家の事情も解決し、実家に戻ることになった。

おばあちゃんは別れの時も笑顔で、「おとうさん、おかあさんと一緒に暮らせるんだね」と言ってくれた。

先日、そのおばあちゃんが亡くなった。89歳での大往生だった。

母から遺品を整理していた時、「あなたへ」と渡されたノートを開いてみると、おばあちゃん自身が作ったスゴロクが描かれていた。

モンスターやぬらりひょんなどの妖怪が混じっていて、おばあちゃんのユーモアが感じられた。

最後のページには「あがり」と達筆な文字で書かれており、その下には「義弘くんに友達がいっぱいできますように」という願いが込められていた。

その言葉を見た瞬間、俺の目からは涙が止まらなかった。家族の前で号泣するのはこれが初めてだった。

おばあちゃん、死に目に会えなくて本当にごめん。おばあちゃんの願い通り、友達もできたよ。ありがとう。

関連記事

駅のホーム(フリー写真)

花束を持ったおじいちゃん

7時16分。 私は毎日、その電車に乗って通学する。 今から話すのは、私が高校生の時に出会った、あるおじいちゃんとのお話です。 ※ その日は7時16分の電車に乗るまでまだ…

ハート(フリー素材)

残りの一年

彼女に大事な話があるからと呼び出した。 彼女も俺に大事な話があると言われて待ち合わせ。 てっきり別れると言われるのかと思ってビビりながら、いつものツタヤの駐車場に集合。 …

オフィスの机(フリー写真)

膝枕

昔、飲み会があるといつも膝枕をしてくれる子が居たんだ。 こちらから頼む訳でもなく、何となくしてもらう感じだった。 向こうも嫌がるでもなく、俺を膝枕しながら他の奴らと飲んでい…

駄菓子屋(フリー写真)

駄菓子屋に集結したヒーロー

近所に古い駄菓子屋がある。 経営しているのは、お婆ちゃん一人だけ(お爺ちゃんは5年程前に病気で亡くなってしまった)。 いつもニコニコしていて、とても優しいお婆ちゃんで、お金…

父と娘

強い人

母は、強い人だった。 父が前立腺癌だと判った時も、入院が決まった時も、葬式の準備の時も、私たち子どもの前で一度も泣かなかった。 だからなのか、当時私はまるで映画を観ている…

浜辺の母娘(フリー写真)

天国へ持って行きたい記憶

『ワンダフルライフ』という映画を知っていますか? 自分が死んだ時にたった一つ、天国に持って行ける記憶を選ぶ、という内容の映画です。 高校生の頃にこの映画を観て、何の気無しに…

恋人(フリー写真)

彼女の遺言

大学時代の同級生仲間で、1年の時から付き合っているカップルが居ました。 仲良しで、でも二人だけの世界を作っている訳ではなく、みんなと仲良くしていました。 私は女の方の一番の…

花嫁(フリー写真)

兄として、父として

最近、私は友人の娘の結婚式に参加しました。 その友人とは高校時代からの長い付き合いで、その娘のこともよく知っています。 彼女の結婚式の案内を受けて、私は喜んで出席すること…

恋

無音の世界で芽生えた恋

五年前の冬の朝。 出動指令の無線が車内に響き、私たち消防隊は病院火災の現場へ走った。 空気は乾ききり、到着したときには二階の窓から黄炎が噴き上がっていた。 ※ …

女の子

天に向かっての約束

7ヶ月前に妻を亡くし、初めて迎えた娘の4歳の誕生日。 今日は休みを取って朝から娘と二人で妻の墓参りに出かけた。妻の死後、娘は毎日「ままにあいたい」「ままかえってこないの」と泣い…