海老の入ったお弁当

公開日: 家族 | 悲しい話 |

お弁当グッズ(フリー写真)

私の母は昔から体が弱かった。

それが理由かは分からないが、母の作る弁当はお世辞にも華やかとは言えない、質素で見映えの悪いものばかりだった。

友達に見られるのが恥ずかしくて、私は毎日食堂へ行き、お弁当はゴミ箱に捨てていた。

ある朝、母が私に

「今日は○○の大好きな海老入れといたよ」

と言ってきた。

私は生返事でそのまま高校へ行き、こっそり中身を確認した。

すると確かに海老は入っていたが、殻剥きも滅茶苦茶だし彩りも悪いし、とても食べられなかった。

家に帰ると、母は私に

「今日のお弁当、美味しかった?」

と、しつこく訊ねて来た。

私はその時イライラしていたし、いつもの母の弁当に対する鬱憤も溜まっていたので、

「うるさいな!あんな汚い弁当、捨てたよ!もう作らなくていいから」

と、ついきつく言ってしまった。

母は悲しそうに、

「気付かなくてごめんね…」

と言い、それを境に弁当を作らなくなった。

それから半年後、母は死んだ。私の知らない病気だった。

母の遺品を整理していたら、日記が出て来た。

中を見ると、弁当のことばかりが書かれていた。

『手の震えが止まらず、上手く卵が焼けない』

日記はあの日で終わっていた。

『今日は○○の好きな海老を入れた。相変わらず体が思うように動かなくてぐちゃぐちゃになったけど…喜んでくれると良いな』

何で食べてあげなかったのだろう…。今でも後悔と情けなさで涙が止まらない。

終戦時の東京(フリー写真)

少女に伝えること

第二次大戦が終わり、私は多くの日本の兵士が帰国して来る復員の事務に就いていました。 ある暑い日の出来事でした。私は、毎日毎日訪ねて来る留守家族の人々に、貴方の息子さんは、ご主人は…

手を握る(フリー写真)

ごうちゃん

母が24歳、父が26歳、自分が6歳の時に両親は離婚した。 母が若くして妊娠し、生まれた自分は望まれて生を受けた訳ではなかった。 母は別の男を作り、父は別の女を作り、両親は裁…

ジッポ(フリー写真)

ジッポとメンソール

俺は煙草は嫌いだ。でも、俺の部屋には一個のジッポがある。 ハートをあしらったデザインは俺の部屋には合わないけど、俺はこのジッポを捨てる事は無いだろう。 一年前。いわゆる合コ…

月(フリー写真)

月に願いを

俺は今までに三度神頼みをしたことがあった。 一度目は俺が七歳で両親が離婚し、父方の祖父母に預けられていた時。 祖父母はとても厳しく、おまけに 「お前なんて生まれて来な…

空と太陽の光(フリー写真)

平和な世界で

あなたへ あなたが、戦地にお向かいになってからもう、何度目の夜でしょう。 娘も、こんなに大きくなって。 あなた、見ていてくれていますか? あの時、私はあなたに言…

女の子の後ろ姿(フリー写真)

温かい家庭

兄家族が俺達の家にやって来て、長女を押し付け引っ越して行った。 兄も兄嫁も甥っ子だけが生き甲斐みたいなところがあったんだよね。 甥っ子は本当に頭が良かったんだ。 勉強…

親子(フリー写真)

育ててくれてありがとう

中学生の頃はちょうど反抗期の真っ最中だった。 ある日、母と些細な事で喧嘩になり、母から 「そんな子に育てた覚えはない!」 と言われました。 売り言葉に買い言葉で…

雨の日の紫陽花(フリー写真)

いってらっしゃい

もう二十年ほど前の話です。 私が小さい頃に親が離婚しました。 どちらの親も私を引き取ろうとせず、施設に預けられ育ちました。 そして三歳くらいの時に、今の親にもらわれた…

カップル(フリー写真)

震災で亡くした彼女

俺の彼女は可愛くて、スタイルが良くて、性格も良くて、正に完璧だった。 高校に入る前に一目惚れした。 彼女も俺に一目惚れしたらしく、向こうから告白してくれたので、喜んで付き合…

デジカメを持つ女性(フリー写真)

母がデジカメを買った

機械音痴の母がデジカメを買った。 とても嬉しいらしく、はしゃぎながら色々なものを撮っていた。 ※ 何日か経った頃、メモリが一杯で写せなくなったらしく 「どうすればいいの…