カテゴリー: ちょっと切ない話

胸が締め付けられるような、あの感覚。泣けるほど悲しいわけではないのに、なぜか心のどこかに引っかかって残る話があります。後悔、別れ、言えなかった言葉。切なさの中にこそ、人が生きる美しさがある——そんな短編をまとめました。

送り状の控えを数えた朝

東京のアパートに、毎月一本だけ島の醤油が届いていた。送り状の控えを、俺は一度も見たことがなかった。父が倒れ、四十九日の翌日、四十年勤めたサチさんが前掛けを外す。…

届かない手紙の宛先

不器用な父との別れと、年月を超えて届く一通の絵葉書を描く感動の短編。新潟の雪深い古書店『松露堂』を舞台に、店主と詩集を借りる中年男性が紡ぐ、家族の和解の物語。届…

妻が遺した裁縫箱

妻を喪って三年。納戸から取り出した漁師着のほつれが、消えていた。誰が繕ったのか──桐の裁縫箱の二重底に眠っていた、五十年前の手紙が真実を告げる。夫婦の絆と隣人の…

兄の魚拓帳

十一年口をきかなかった兄の漁師小屋で、弟が見つけたのは三十年分の魚拓帳だった。空白のページに繰り返される『静夫、来ず』──たった四文字に込められた、不器用な兄の…

六十年分の桜のしおり

能登の縁側に、横浜から見知らぬ封筒が届いた。差出人は、十五の夏に桜のしおりを手渡した少年の娘だった。世界中の港の本に一枚ずつ挟まれた和紙と、朱色の組紐の結び目。…

二十四枚のカメラ

七年前に喧嘩別れした幼馴染が先月他界した。遺品として届いた二十四年前の使い切りカメラを現像すると、最後の五枚に、病床の自撮りと、冬の海と、私への謝罪のメッセージ…

十五年越しの忘れ物

十五年前、大阪の雨の夜に私のタクシーに残された、ひかりと書かれた小さな貯金箱。ずっと返せずにいた忘れ物が、思いがけない再会で持ち主の娘のもとへ帰っていく。静かに…

干し花の残った場所

陶芸家の俺は10年前の元恋人を忘れられず、もらった花束を干し花にしてずっと工房に置いていた。ある秋、その彼女が客として現れ——切なくも温かい再会の物語。…

母の弁当箱の蓋の言葉

東京で和菓子職人を営む誠は、母の家の整理中に古いアルミのお弁当箱を見つけた。錆びた蓋の裏には、六年分の日付と一言が並んでいた——口下手な母が語らなかった愛の形。…

城下町の番傘

十年前に告白できなかった初恋の人と、出張先の城下町で再会した。祖父のリハビリに付き添う彼女が手にしていたのは、蔵から出してきた古い番傘だった。泣ける恋愛の感動短…

母の弁当箱

毎朝四時、台所に置かれた弁当箱。団地で母とふたり暮らしの配達員が、二十四年間当たり前だと思っていたものの重さに気づいた朝の物語。…