カテゴリー: ちょっと切ない話

胸が締め付けられるような、あの感覚。泣けるほど悲しいわけではないのに、なぜか心のどこかに引っかかって残る話があります。後悔、別れ、言えなかった言葉。切なさの中にこそ、人が生きる美しさがある——そんな短編をまとめました。

ミルと父

家には、十年ものあいだ一緒に暮らしていた猫がいた。 名前は「ミル」。白地に淡い灰色の柄が入った、シャム猫とどこかの雑種のような子だった。 その出会いは、広場の隅…

最期に選んだ場所

物心ついた頃から、ずっと一緒にいた猫が病気になった。 毎日名前を呼ぶと、必ず腕の中に飛び込んできていたあの子が、もう元気に動くことすらできなくなっていた。 獣医…

約束の土曜日

3歳の頃から、毎日のように遊んでくれたお兄ちゃんがいた。一つ年上で、勉強もスポーツもできて、とにかく優しい。 一人っ子の僕にとって、彼はまるで本物の兄のような存…

ふたりの幸せのかたち

もう五年も前のことになる。当時、俺は無職だった。 そんな自分に、ひとりの彼女ができた。きっかけは、彼女の悩みをたまたま聞いてあげたことだった。 正直なところ、最…

ずっと一緒だから

もう、あれから二年が経った。 当時の俺は、医学生だった。そして、かけがえのない彼女がいた。 世の中に、これ以上の女性はいない。本気でそう思えるほど、大切な存在だ…

届かぬ想い

関係を迫ると、「あなたは紳士じゃない」と言われた。 けれど、関係を迫らなければ、「あなたは男じゃない」と責められた。 何度も君の部屋を訪ねると、「もっと一人の時…

笑顔の理由

俺が小学生だった頃の話だ。 同じクラスに黒田平一(仮名)、通称「クロベー」というやつがいた。 クロベーの家は母子家庭で、母親と弟との三人暮らしだった。 親戚の家…

残された日記

二年付き合った彼に、突然ひどい言葉で別れを告げられました。やがて届いた訃報と、病院のゴミ箱から拾われた一冊の日記。残された日記の最後のページに綴られていた、彼の…

君の笑顔のために

いじめで泣いていた教室の隅で、彼女は「笑いなよ」と言ってくれた。卒業式の三日前に届いた訃報と、二年後の同窓会で知った彼女の想い。君の笑顔のために笑い続けると決め…

父からのタスキ

小さい頃、よく父に連れられて街中を走ったものだった。 生まれ育った町は田舎で、交通量も少なく、自然が多く残る静かな場所だった。晴れた日には特に、空気が澄んでいて…