余命3ヶ月の母の“最後のおむすび”
僕がかつて看取った患者さんに、スキルス胃がんを患っていた一人の女性がいました。 余命3ヶ月と診断され、彼女はある病院の緩和ケア病棟に入院してきました。 ※ ある…
胸が締め付けられるような、あの感覚。泣けるほど悲しいわけではないのに、なぜか心のどこかに引っかかって残る話があります。後悔、別れ、言えなかった言葉。切なさの中にこそ、人が生きる美しさがある——そんな短編をまとめました。
僕がかつて看取った患者さんに、スキルス胃がんを患っていた一人の女性がいました。 余命3ヶ月と診断され、彼女はある病院の緩和ケア病棟に入院してきました。 ※ ある…
高校一年の秋から、私の上履きの向きはいつも揃っていました。踵を外に向けて、左右が同じ角度で並んでいる。自分で揃えた覚えはありません。同じ高校に通う幼馴染が階段か…
私の夫は、結婚する前に脳の病気で倒れ、死の淵を彷徨いました。 その知らせを私が知ったのは、倒れてから5日も経ってからのことでした。 彼の家族が病院に駆けつけた際…
私の彼氏は、もうこの世にいません。 希少がんという、稀にしか見つからない病気でした。 彼は、我慢強くて、なかなか弱音を吐けない人でした。 それでも、陽気で明るく…
1月の寒い朝になると、必ず思い出す少年がいます。 あれは、私が狭心症のため休職し、九州の実家で静養していたときのことでした。 毎朝、愛犬のテツと散歩に出かけてい…
俺が惚れた子の話をします。 俺はもう、40歳手前の独身男です。 もう5年近く、彼女もいません。 ※ そんな俺が、去年の5月ごろに友人に誘われ、なんとなくゴルフを…
兄家族が、俺たちの家に突然やってきた。 そして――長女を置いて、引っ越していった。 ※ 兄も兄嫁も、昔から甥っ子ばかりを溺愛していた。 甥は確かにすごい奴だっ…
あれは、今から一年半前。大学3年になったばかりの春のことでした。 授業が終わり、帰り支度をしていると、携帯が鳴りました。 画面に表示されたのは、彼の親友からの着…
あなたは雪を描くとき、白い絵の具を使わない人でした。夏の病室で「ゆきがみたい」と言われ、僕は真夏の富士山へ登りました。間に合わなかったあの夏と、枕元に置いていっ…
4歳になる娘が、「字を教えてほしい」と言ってきました。 正直、どうせすぐ飽きるだろうと思いながらも、毎晩少しずつ教えてあげるようになりました。 「あ」はこう書く…
私の甥っ子は、母親である妹が病気で入院したとき、しばらくの間、私たち家族のもとで過ごすことになりました。 「ままが びょうきだから、おとまりさせてね」 そう言っ…
小学三年の夏休み、バス停に毎日立つ中学生の女の子がいました。時計台を見上げ、時刻表の同じ行を人差し指でなぞる。それを何時間も繰り返していたのです。十数年後、同じ…
日曜日の河原で食べたおにぎり、千円が払えず入れなかった球場、外のベンチで広げた弁当。幼い頃に父を亡くした俺と、働き詰めだった母。母の涙と最期の「野球……ごめんね…
六歳で旅立った妹の大好物は、街のケーキ屋のいちごのショートケーキだった。病室へ走った十七歳の兄は、あるだけのケーキを抱えて戻る。苺を最後まで残す妹との約束と、お…
娘を背に、小さな日の丸の旗を振って、あなたを見送ってから―― もう、半世紀が過ぎてしまいました。 たくましいあなたの腕に抱かれたのは、ほんの、ほんのつかの間でし…