半年前の俺へ

公開日: 兄弟姉妹 | 悲しい話

朝焼け(フリー写真)

半年前の俺へ。

そっちは午前4時だな。

部活で疲れてぐっすり眠っている頃だと思うが、頑張って起きろ。

今から言う事をやってくれ。頼む、お前のためだから。しくじるなよ。

音を立てないようにしろ。気付かれるから。

まず、一階に降りて台所から包丁を持って来い。

そしてお前のバカ兄貴の部屋の前に行き、ドアを開けて部屋に駆け込み一撃でぶった切れ。

バカ兄貴が首を吊ろうとしている、その柔道の帯で作った輪っかをな。

そうしないとバカ兄貴が首を吊って死んじまうぞ。

発見した時の光景と母さんの悲鳴は、多分一生、お前の頭から離れなくなる。

前日まで普通に相談に乗ってもらっていた兄貴が、次の日には死んでんだぞ。

居なくなるんだ。

あと兄貴に言ってやれ。

「散々アンタをバカにして来たが、学校じゃ自慢しまくるくらい好きなんだよ」

って…。

頼む。頼むよ。

頼むからこの文を半年前の俺へ送らせてくれよ。

頼むよ。お願いします。

「おやすみ。また明日な」

って言ってたじゃねえか。

バカ兄貴。

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