直立不動の敬礼

自衛隊員の方々(フリー写真)

2年前、旅行先での駐屯地祭での事。

例によって変な団体が来て、私は嫌な気分になっていた。

するとその集団に向かって、一人の女子高生とおぼしき少女が向かって行く。

少女「あんたら地元の人間か?」

団体「私達は全国から集まった市民団体で…云々」

少女「で、何しに来たんや?」

団体「憲法違反である自衛隊賛美に繋がる…云々」

少女「私は神戸の人間や。はるばる電車に乗って何しにここまで来たか解るか?」

団体「…?」

少女「地震で埋もれた家族を助けてくれたのは、ここの部隊の人や。

寒い中ご飯を作ってくれて、風呂も沸かしてくれて、夜は夜で槍を持ってパトロールしてくれたのも、ここの部隊の人や。

私は、その人達にお礼を言いに来たんや。

あんたらに解るか?

消防車が来ても通り過ぎるだけの絶望感が。

でもここの人らは歩いて来てくれはったんや…」

最初、怒鳴り散らすように話し始めた少女の声は、次第に涙声に変わって行った。

あまりにも印象的だったので、今でもはっきり憶えている。

団体は撤退。

彼女が門をくぐった時、守衛さんが彼女に社交辞令の軽い敬礼ではなく、直立不動のまま敬礼していた。

関連記事

病院(フリー背景素材)

二つ目のセーブデータ

ゲームボーイの『Sa・Ga2 秘宝伝説(以下、サガ2)』は思い出のソフトなんだ…。 今でもよく思い出しては切なくなっています。 ※ 俺さ、生まれた時から酷い小児喘息だったのよ…

ダイヤの結婚指輪(フリー写真)

年下の彼氏

年下の彼氏が居た。当時の私は30歳で、彼は22歳だった。 大学生だった彼は、社会人の私に頭が上がらなかったらしく、付き合い始めて3年経っていたが将来の話なんて一つもしなかった。 …

バー

最後のショットバー

20歳の誕生日、姉は私を雰囲気の良いショットバーに連れて行ってくれた。初めてのバー体験に圧倒されている私を見て、姉は「緊張してんの? 何か子供の頃のアンタみたい」と笑いながら、彼女が…

駅のホーム(フリー写真)

母を守る子

昔は JR大久保駅(兵庫県)から通勤していたのですが、週2日は午前10時までに舞子に着けば良い時期がありました。 朝はゆっくりできるし、電車は空いていて快適でした。 ホー…

おにぎり(フリー写真)

二人の母

俺の母親は、俺が5歳の時に癌で亡くなった。 それから2年間、父と2歳年上の姉と三人暮らしをしていた。 俺が小学1年生の時のある日曜日、父が俺と姉に向かって 「今から二…

恋人同士(フリー写真)

大切なペンダント

中学2年生の時、幼馴染のKという女子に恋心を抱いていた。 しかし、Kは俺よりも数倍かっこいい男子と付き合っていた。 俺がかなう相手でもなく、彼女自身がそれを伝えてきたので…

野球のグローブ(フリー写真)

カーブ!

今はお通夜の最中です。兄貴が死にました。 4つ年上の兄貴は40歳の若さで、この世を去りました。胃癌でした。 私の家は母子家庭でした。だから初めて野球を教えてくれたのは、親父…

駅のホーム

旅で得た千円札

学生時代、ほとんどお金を持たずに貧乏旅行に出た私。帰りの寝台列車の切符を買ったら、残金はわずか80円になってしまった。食事をしていないのは丸一日、家に着くまではまだ36時間以上ある。…

空(フリー写真)

お盆のある日

私には4年前、赤ちゃんの時に亡くなった子どもがいました。 昨年の8月のお盆のある時、上の娘が空を見上げて 「お母さん、空見てみて。ほら、空の雲の間に光っているところあるで…

ナースステーション(フリー写真)

最強のセーブデータ

俺が小学生だった時の話。 ゲームボーイが流行っていた時期のことだ。 俺は車と軽く接触し、入院していた。 同じ病室には、ひろ兄という患者が居た。 ひろ兄は俺と積極…