靖国での再会

公開日: 友情 | 心温まる話 | 戦時中の話

戦時中

俺の爺さんは戦地で足を撃たれたらしい。

撤退命令が出て皆急いで撤退していたのだが、爺さんは歩けなかった。

隊長に、「自分は歩けない。足手まといになるから置いて行って下さい」と言うと、黙って何時間も背負って逃げてくれたらしい。

撤退場所に着いて応急手当が終わり、お礼を言おうと隊長を探すと、上官は再び出撃の準備をしていたらしい。

「ありがとうございました。このご恩は一生忘れません」と泣きながら言うと、隊長が「お前は怪我をしているから日本に帰れる。俺は今から祖国の為に戦って来る。多分生きて日本には帰れないだろう」と言った。

爺さんは、「自分もここに残ります」と言いかけたところで、「泣く事は無い。死ねば日本に帰れる。靖国で会おう」と上官は言っていたらしい。

爺さんの足には酷い傷跡が残っていたのだが、その傷を見る度にその隊長を思い出すらしい。

爺さんはもう亡くなってしまったのだけど、亡くなる少し前に「死んだら隊長に会える。やっときちんとお礼を言える。随分遅くなってしまった」と呟いていたよ。

関連記事

猫(フリー写真)

会いに来てくれた猫

五年前に飼っていた茶トラ猫。 当時、姉が家出同然で出て行ってしまい、家の雰囲気が暗かったのを憶えています。 そんなこともあり、私は家では出来るだけ明るく振る舞っていましたが…

巣鴨の歩行者天国(フリー写真)

とげぬき地蔵様

私は小さい頃から中耳炎で、しょっちゅう耳が痛くなっては、治療のために耳鼻科へ行っていました。 小学校に入ると、私が耳鼻科に行くために学校を休んだり早退したりすると、クラスの子に …

ディズニーランド(フリー写真)

ディズニーランドの星

ある日、ディズニーランドのインフォメーションに、一人の男性が暗い顔でやって来ました。 「あの…落とし物をしてしまって」 「どういったものでしょうか?」 「サイン帳です…

虹(フリー写真)

自分らしく生きる言葉

嫌いな人を憎むより、大好きな人を愛したい。 悪い噂話をするより、嬉しいことや楽しいことを話したい。 そのような時間を多くして生きたい。 大切な時間を大切に。大切な人…

太平洋戦争(フリー写真)

少年の志願

俺は今、介護福祉士として働いている。 妹が今度修学旅行で鹿児島へ行くらしく、職場でその話をしていたら、利用者さんの一人が 「鹿児島か…」 と暗く呟いた。 その方…

スーパー

小さな勇気、大きな友情

私はセイコーマートで働いて三年目になります。 店にはよく来る小さな常連客がいます。その子は生まれつき目が見えず、白い杖をついて母親と共に週に二、三度店を訪れます。 ある日…

ウエディング

隠された記憶

友人の結婚披露宴に参加した際の出来事です。式も終盤に差し掛かり、新婦の父親のスピーチの時間がやってきました。 「明子。お前が生まれたばかりの頃、お母さんは病気で亡くなってしまっ…

母と子

母の強さ

母は、バツニです。 1人目の旦那さんで兄と私を産み、2人目の旦那さんで妹を産みました。 1人目の父はギャンブル依存症で、多額な借金を抱え家に帰って来ないほどパチンコをして…

マグカップ(フリー写真)

友人の棺

友人が亡くなった。 入院の話は聞いていたが、会えばいつも元気一杯だったので見舞いは控えていた。 棺に眠る友人を見ても、闘病で小さくなった亡骸に実感が湧かなかった。 …

父親の手を握る子(フリー写真)

もし生まれ変わったら

両親が離婚して、若くして妊娠した母親にとっては、望まれた子供ではなかった。 自分が6歳の時に母は別の男性と付き合い、父親も別の女性と関係を持ったため、両親は自分の親権を争う裁判…