峠を歩く人が船に乗った日
泣ける話・長編。半島の集落で俺を育てた隣家のトキさんは、渡船に乗らず峠を歩き、いつも俺を右側に立たせた。十五の夏の約束を果たせないまま別れて三十年、廃止される渡…
泣ける話・長編。半島の集落で俺を育てた隣家のトキさんは、渡船に乗らず峠を歩き、いつも俺を右側に立たせた。十五の夏の約束を果たせないまま別れて三十年、廃止される渡…
婚約者の長い療養で結婚式をあきらめた私と、注文の止まったウェディングドレスを十一年間しつけ糸のまま守り続けた仕立て屋の物語。袖口の白い糸に隠されていた約束と、病…
女人禁制の霊山を担ぐ強力の俺と、頂を焦がれた許婚のスズ。彼女が遺した黄楊の櫛に託された『片割れが待っている』という言葉の本当の意味を、俺は雲海の頂で知る。昭和の…
九官鳥のおかえりという二言だけが、四十年たった今も耳の奥に残っている。北の山あいの谷へ単身赴任した若き日、凍える独りの夜を支えてくれた一羽の鳥に、私はある約束を…
不治の病で5歳の息子を亡くした夫婦が、生前の約束を果たすため遊園地を訪れる。空の椅子に感じた小さな温もりが、二人に再び生きる力を与えてくれた。…
点滴の針を怖がって泣いていた五歳の子が、うん分かった約束だよ、と言って自分から腕を出しました。外で遊ぶ約束だと、私はずっと思っていました。看護師がシーツを抱えて…
妻を見送って七ヶ月、四歳の誕生日を境に娘がぱったり泣かなくなりました。ばあばと約束したと言いますが、義母は知らないと言います。風呂の湯を足す音の意味に父が気づく…
駅裏の小さな卓球場に、毎日ひとりで通う高校生がいました。彼が球出し機をいちばん速くする理由を、店主は長いあいだ知りませんでした。亡き父と交わした約束と、返せなか…
泣ける話。ほとんど学校に来られない少女に毎日連絡帳を届ける係になった俺は、帳面の隅で交わした小さな文通と、指切りの約束を知ります。渡せなかった一枚の絵、果たせな…