未来への遺言

公開日: 恋愛 | 悲しい話

手をつなぐカップル(フリー写真)

私の初恋の人、かつての彼氏がこの世を去りました。

若さゆえに我儘を尽くし、悔いが残る行為ばかりでした。

ある日、突如として「別れて欲しい」と告げられ、私は意地を張って「いいよ」と返答しました。

半年後に予期せぬ電話があった際も、私は強がって「彼氏ができて幸せだ」と伝えました。

それは嘘でした。新たな彼氏など、実際にはいませんでした。

その出来事からおおよそ一年後、彼の友人から連絡が届きました。

彼が肝臓癌で一年前に亡くなっていたとのことでした。

一周忌を迎えた際に、私に連絡を入れてほしいと遺言に残していたと伝えられました。

彼から私への遺書があり、その中には、

「こんな別れ方しかできなくてごめん。幸せになって欲しい。愛してる」

と記されていました。

彼はなぜ一人で全てを背負って亡くなったのでしょう。

なぜ共に病気と闘うチャンスを与えてくれなかったのでしょう。

なぜ真実を私に伝えてくれなかったのでしょう。

彼に向けて尋ねたいことが山ほどあり、彼を責めてしまいたい気持ちに駆られました。

それから二年が経ち、ようやく心の整理がつきました。

彼が病状を伝えなかった彼独特の優しさも理解できるようになりました。

しかし、頭で理解していても、まだ感情が追いつかない状態です。

彼のことを忘れることは一生ないでしょうし、彼に問いかけることも続くでしょう。

一度だけで良いから彼に会いたい。優しく接したい。そして、「愛している」と伝えたい。

関連記事

雪(フリー写真)

季節外れの雪

「ゆきをとってきて…おねがい、ゆきがみたい…」 あなたはそう言って、雪をほしがりましたね。 季節外れの雪を。 ※ あれから何年も時が経ちました。 あなたは、ゆっく…

オフィス(フリー写真)

秘密のお守り

初めて彼女に会ったのは、内定式の時。同期だった。 聡明を絵に書いたような人。学生時代に書いた論文か何かが賞を獲ったこともあるらしく、期待の新人ということだった。 ただ、ちょ…

ビーチを歩くカップル(フリー写真)

初恋と友情

親友に第一子が生まれたとメールが届いたので記念に投稿します。 親友の嫁が俺の初恋の相手。 親友も親友の嫁(以下Aとします)も俺も同じ小学校、同じクラスで、Aは小学3年生の時…

子供の寝顔(フリー写真)

お豆の煮方

交通安全週間のある日、母から二枚のプリントを渡されました。 そのプリントには交通事故についての注意などが書いてあり、その中には実際にあった話が書いてありました。 それは交通…

親子(フリー写真)

娘が好きだったハム太郎

娘が六歳で死んだ。 ある日突然、風呂に入れている最中に意識を失った。 直接の死因は心臓発作なのだが、持病の無い子だったので病院も不審に思ったらしく、俺は警察の事情聴取まで受…

黒猫(フリー写真)

黒猫の赤ちゃん

小学校の時、裏門の所に小さな黒猫の赤ちゃんが捨てられていた。 両目とも膿でくっついていて、見えていない様子。 どうしても無視できなくて家へ持って帰ったら、やはり飼っては駄目…

ビル

隣の席の喪失と救い

ある日、私の隣に座っていた会社の同僚が亡くなりました。彼は金曜日の晩に飲んだ後、電車で気分が悪くなり、駅のベンチに座ったまま息を引き取ったのです。55歳という若さでした。 私た…

夕日と花を掴む手(フリー写真)

泣くな

ある日、教室へ行くと座席表が書いてあった。 私の席は廊下側の前から二番目。彼は窓側の一番後ろの席。離れてしまった。 でも同じクラスで本当に良かった。 ※ クラスに馴染ん…

青空(フリー写真)

彼女に会いに行きたい

俺も元カノを亡くしたよ。もう何年も前だけど。 中学の頃に親父が死んでも大して泣かなかったが、これはボロ泣きした。 彼女とは3年ちょい付き合って、俺の我侭で上手く行かなくなり…

カップル(フリー写真)

秘密で手話を

待ち合わせた彼女を待っていて見かけたのは、大学生風のカップルだった。 男の子が女の子の正面に立って、何かしきりに手を動かしていた。手話だ。 彼はやっと手話を覚えたこと、覚え…