届かなかった「ごめんね」

あの日、私たちは些細なことで言い争っていた。
本当はすぐにでも仲直りできると、心のどこかでは思っていた。
でも、彼女は険しい表情のまま、何も言わずに仕事へと向かっていった。
後悔が滲み始めていたものの、私は素直になれず、そのまま友人たちと合流して、何気なく彼女への不満を口にしていた。
そのときは、まだあの別れが永遠になるとは思ってもいなかった。
※
夕暮れが近づき、彼女の勤務が終わる頃を見計らって、私はメッセージを送った。
内容はたわいもないもので、私たちの関係を変えるような決定的な言葉ではなかった。
けれども、返事のやりとりを続けるうちに、突然、彼女からの返信が途絶えた。
喧嘩の最中だったこともあり、私はその沈黙を気にしつつも、深く考えずに時間を過ごしていた。
※
約一時間後、彼女の番号から電話がかかってきた。
「仲直りかな」――そんな期待を胸に、私は通話ボタンを押した。
だが、スピーカーから飛び込んできたのは、見知らぬ女性の怒りに満ちた声だった。
「あなたが殺したのよ!」
瞬間、血の気が引いた。何が起きたのか、頭が追いつかない。
やがて電話は静かな男性の声に変わり、彼女が事故に遭い、帰らぬ人となったことを淡々と告げられた。
私は言葉を失い、その場に崩れ落ちた。
※
電話を切った直後、彼女から最後のメッセージが届いた。
それはたった一言――「ごめんね」
その優しさに、私は全身を貫かれた。
許されていたのか、謝らなければならなかったのは私の方だったのに。
※
その後、彼女の家族から連絡は途絶え、私は葬儀にも呼ばれず、彼女との最後の別れを交わすことすらできなかった。
あの日から、私はずっと彼女に「ごめん」と言えずにいる。
彼女にもう一度会えたら、笑って「おかえり」と言ってくれたら、どんな罰でも受けるつもりだ。
けれどそれは、もう二度と叶わない。
私の心の奥には、彼女に伝えられなかった謝罪と、共に過ごせなかった未来への悔しさが、深く刻まれている。
永遠に。