嫁の日記

先日、ふと嫁の日記を盗み読みしてしまった。
何気なく手に取ったその日記に書かれていたのは、嫁が普段、昼ごはんに納豆ご飯やお茶漬けしか食べていないという事実だった。
さらに驚いたことに、友達とファミレスへ行くのも月に一度だけと決めているらしい。
日記には、こう綴られていた。
「今日は○ちゃん(俺)の好きな牡蠣を買うのだ~!」
そんな明るい文字が並ぶページを見て、俺は思わず胸が締め付けられた。
自分のお昼を削ってでも、俺に少しでも美味しい料理を食べさせようとしてくれていたなんて…。
日記の中には俺への文句もいくつか書いてあったけれど、それさえも最後は決まって俺をフォローする言葉で終わっていた。
「でも○ちゃんは、頑張ってるからな~」
そんな一言を見るたび、俺は涙が溢れて止まらなくなった。
もっと俺に甲斐性があれば、昼から寿司でも焼肉でも、好きなものを何でも食べさせてやれるのに。
収入が少ないのに、嫁に専業主婦でいて欲しいと頼んだのは俺だ。
なのに嫁は、一度だって金銭面のことで俺を責めたりしない。
「節約も案外楽しいよ」
なんて笑顔で言ってくれる。
俺がタバコを吸っていると、
「タバコはちょっと減らしてよね」
と冗談めかして注意はされるが、それすらも俺の健康を考えてのことだろう。
日記を勝手に読んだのは悪いことだったけれど、嫁の心を知って、俺は改めて結婚してよかったと思った。
こんなにも俺のために尽くしてくれる人は、親以外では初めてだ。
今の俺にはまだ何もしてやれないけれど、一つだけ誓えることがある。
俺は決して浮気をしない。
…いや、浮気しようにも、そもそも俺は全然モテないんだけどな。