嫁の日記

公開日: 夫婦 | 心温まる話

日記帳

先日、ふと嫁の日記を盗み読みしてしまった。

何気なく手に取ったその日記に書かれていたのは、嫁が普段、昼ごはんに納豆ご飯やお茶漬けしか食べていないという事実だった。

さらに驚いたことに、友達とファミレスへ行くのも月に一度だけと決めているらしい。

日記には、こう綴られていた。

「今日は○ちゃん(俺)の好きな牡蠣を買うのだ~!」

そんな明るい文字が並ぶページを見て、俺は思わず胸が締め付けられた。

自分のお昼を削ってでも、俺に少しでも美味しい料理を食べさせようとしてくれていたなんて…。

日記の中には俺への文句もいくつか書いてあったけれど、それさえも最後は決まって俺をフォローする言葉で終わっていた。

「でも○ちゃんは、頑張ってるからな~」

そんな一言を見るたび、俺は涙が溢れて止まらなくなった。

もっと俺に甲斐性があれば、昼から寿司でも焼肉でも、好きなものを何でも食べさせてやれるのに。

収入が少ないのに、嫁に専業主婦でいて欲しいと頼んだのは俺だ。

なのに嫁は、一度だって金銭面のことで俺を責めたりしない。

「節約も案外楽しいよ」

なんて笑顔で言ってくれる。

俺がタバコを吸っていると、

「タバコはちょっと減らしてよね」

と冗談めかして注意はされるが、それすらも俺の健康を考えてのことだろう。

日記を勝手に読んだのは悪いことだったけれど、嫁の心を知って、俺は改めて結婚してよかったと思った。

こんなにも俺のために尽くしてくれる人は、親以外では初めてだ。

今の俺にはまだ何もしてやれないけれど、一つだけ誓えることがある。

俺は決して浮気をしない。

…いや、浮気しようにも、そもそも俺は全然モテないんだけどな。

関連記事

渋滞(フリー写真)

迷彩服のヒーロー

一昨年の夏、私は5歳の息子を連れて、家から車で1時間の所にある自然博物館の昆虫展へ向かっていました。ムシキングの影響で、息子はとても楽しみにしていました。 あと数キロと言う地点で…

父と娘(フリー写真)

娘からの愛情弁当

俺は高校まで都立でずっと給食だったし、大学のお昼も学食やコンビニで済ませていた。 母親の手作り弁当の記憶など、運動会か遠足くらいだ。記憶が遠過ぎて覚えていない。 就職して…

牢屋

想像の中の少女と共に

大戦中、ドイツ軍の捕虜収容所に居たフランス兵たちのグループが、捕虜生活の苛立ちから来る仲間内の争いや悲嘆を紛らわすために、共同で「脳内共同ガールフレンド」を創り出した話。 彼ら…

サッカーボール(フリー写真)

先輩の声

高校の頃はあまり気の合う仲間が居なかった。 俺が勝手に避けていただけなのかもしれないが、友達も殆ど居らず、居場所などどこにも無かった。 そんな人間でも大学には入れるんだね。…

妊婦さんのお腹(フリー写真)

命懸けで教えてくれた事

13年前、俺は親元を離れて一人暮らしの大学生という名のろくでなしだった。 自己愛性人格障害の父親に反発しつつも、影響をもろに受けていた。 プライドばかり高く、傲慢さを誇りと…

花束(フリー写真)

大切なあなたに花束を

私は介護施設で働いています。 時々おじいちゃんやおばあちゃん宛に、ご家族の方よりお手紙や花束が届きます。 花束を持って行くと、皆さん集まって来ます。 自分かもしれない…

ピンクのチューリップ(フリー写真)

親指姫

6年程前の今頃は花屋に勤めていて、毎日エプロンを着け店先に立っていた。 ある日、小学校1年生ぐらいの女の子が、一人で花を買いに来た。 淡いベージュのセーターに、ピンクのチェ…

クリスマスプレゼント(フリー写真)

サンタさんから頼まれた

※編注: このお話は、東日本大震災発生から5日後の3月16日に2ちゃんねるに書き込まれました。 ※ 当方、宮城県民。 朝からスーパーに並んでいたのだが、私の前に母親と泣きべそ…

電話機

電話越しの陽だまり

結構前、家の固定電話が鳴った。 『固定電話にかけてくるなんて、誰だろう?』と思いつつ、電話に出ると、若い男の声がした。 「もしもし? 俺だけど、母さん?」 すぐにオ…

母と子

母の強さ

母は、バツニです。 1人目の旦那さんで兄と私を産み、2人目の旦那さんで妹を産みました。 1人目の父はギャンブル依存症で、多額な借金を抱え家に帰って来ないほどパチンコをして…