結婚記念日おめでとう

公開日: 仕事 | 心温まる話

封筒を持つ手(フリー写真)

入社4年目の時に、初めて結婚記念日の日を迎えた。

しかしその日、運悪く社内でトラブルが発生した。

下手したら全員会社に泊まりになるかもしれないという修羅場なのに、

「結婚記念日なので帰らせてください」

とは絶対に言えなかった。

17時を回った頃、T課長が俺を呼びつけ、封筒を渡し、

「これをK物産に届けろ」

と言う。

K物産は隣の県にある得意先で、今から車で出ても20時までに着けるかどうかすら分からない。

「届けたら直帰していいから」

と言うが、直帰も何もK物産に届けて家まで帰ったら、きっと23時は過ぎるだろう。

文句を言いたかったが、

「解りました」

と言って封筒を預かった。

中身を見ようとすると、

「中身は車の中で見ろ。さっさと行け!」

と、つれないT課長。

不満たらたらの声で

「行って来ます」

と言うと、課内の同情の目に送られて駐車場へ向かった。

車に乗り込み封筒を開けると、一枚の紙切れが。

『結婚記念日おめでとう。今日はこのまま帰りなさい』

と書かれていた。

会社に入って初めて泣いた。

その翌年、T課長は実家の家業を継ぐために退社した。

送別会の席でお礼を言ったら、

「そんなことあったか?」

と、すっとぼけていた。

関連記事

空(フリー写真)

見守ってくれた兄

我が家の仏壇には、他より一回り小さな位牌があった。 両親に聞いた話では、生まれる前に流産してしまった俺の兄のものだという。 両親はその子に名前(A)を付け、事ある毎に …

虹

天からの手紙

妊娠と同時に、夫の癌が発覚しました。彼は子供の顔を一目見るまで頑張ると決心していましたが、残念ながら間に合いませんでした。夫が亡くなってからは、私一人で息子を育てています。息子は本当…

手紙(フリー写真)

亡くなった旦那からの手紙

妊娠と同時に旦那の癌が発覚。 子供の顔を見るまでは…と頑張ってくれたのだけど、ちょっと間に合わなかった。 旦那が居なくなってしまってから、一人必死で息子を育てている。 …

赤ちゃんの足を持つ手(フリー写真)

ママの最後の魔法

サキちゃんのママは重い病気と闘っていたが、死期を悟ってパパを枕元に呼んだ。 その時、サキちゃんはまだ2歳だった。 「あなた、サキのためにビデオを3本残します。 このビ…

女の子の後ろ姿(フリー写真)

温かい家庭

兄家族が俺達の家にやって来て、長女を押し付け引っ越して行った。 兄も兄嫁も甥っ子だけが生き甲斐みたいなところがあったんだよね。 甥っ子は本当に頭が良かったんだ。 勉強…

手を繋いで歩く夫婦(フリー写真)

たった一つの記憶

私の夫は、結婚する前に脳の病気で倒れてしまい、死の淵を彷徨いました。 私がそれを知ったのは、倒れてから5日も経ってからでした。 夫の家族が病院に駆け付け、携帯電話を見て私の…

夕日(フリー写真)

自衛隊の方への感謝

被災した時、俺はまだ中学生でした。 家は全壊しましたが、たまたま通りに近い部屋で寝ていたので腕の骨折だけで済み、自力で脱出することが出来ました。 奥の部屋で寝ていたオカンと…

手紙

パパと綴られた手紙

私が30歳になった年、ひとつ年下の彼女と結婚しました。 今、私たちには、娘が三人、息子が一人います。 長女は19歳で、次女は17歳、三女は12歳。 そして、長男は1…

赤い薔薇(フリー写真)

赤い薔薇の花束

数年前にお父さんが還暦を迎えた時、家族4人で食事に出掛けた。 その時はお兄ちゃんが全員分の支払いをしてくれた。 普段着ではなく、全員が少しかしこまっていて照れくさい気もした…

手を繋いで夕日を眺めるカップル(フリー写真)

ずっと並んで歩こうよ

交通事故に遭ってから左半身に少し麻痺が残り、日常生活に困るほどではないけれど、歩くとおかしいのがばれる。 付き合い始めの頃、それを気にして一歩下がるように歩いていた私に気付き、手…