知ってるよ

公開日: 家族 | 心温まる話 |

親子(フリー写真)

「結婚したい子が出来た」

とオヤジに言ったら、数日後に

「大事な話がある」

と言われ、家族会議になった。

今までに無い、真剣な顔で…。

父「実は、俺と…俺と、お前は血の繋がりが無いんだ」

俺「…うん、知っ…」

父「でもな! でも! 父さんは、いつだってお前を本当の息子と思って来た!」

俺「いや、うん。だから、知っ…」

父「お前は、俺の息子だぁぁぁぁ!」

父、涙目。

母、号泣。

俺、呆然。

父「うん、解るよ。いきなりこんな事言われたら…混乱するよな…。黙ってて悪かった。うん。父さんが悪かっ…」

俺「知ってるよ」

父「うん、そうだよな………。あ?」

俺「いや、だから俺。それ知ってるよ」

父「え?」

俺「え?」

嘘みたいだけど、本当の会話。

リアルで「え?」を言い合うとは思ってもみなかった(笑)。

オヤジは母親と結婚する前、うちの隣に住んでいた。

3才くらいの時、母親に

「たーちゃん(オヤジ)がパパになったら、あっくん(俺)はどう?」

と聞かれたのを憶えている。

俺は確か、

「すごく嬉しい」

みたいな事を言ったはず。

その時の事を母親に言ったら、

「だって…あっくん小さかったし。絶対覚えてないと思って…」

と泣かれた。

オヤジは、

「そっか。知ってたか。

知ってて一緒に居てくれたのか」

と泣いた。

危うく俺も泣きそうになった(笑)。

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