本当のお金の価値

父の背中(フリー写真)

私が中学校1年生の時の話である。

私は思春期や反抗期の真っ只中ということもあり、少しばかりやんちゃをしていた。

不法侵入をしたり、深夜まで遊んでいたこともあり、警察にはしばしばお世話になっていた。

授業中も教室に居ることは少なくなり、友達と体育館の裏などで話していた。

すると友達がポケットからお菓子を取り出し、

「これ、そこのコンビニで万引きして来た」

と自慢気に言い出した。

それが悪いことであることは解っていたが、若さのあまり興奮が治まらなかった。

そして私の周りでは、少しずつ万引きが流行るようになって行った。

最初は駄菓子屋で 20円くらいのお菓子を万引きすることから始まり、コンビニやスーパーなどでも万引をするようになった。

ついには UFOキャッチャーの景品にまで手を伸ばすほどエスカレートした。

※

ある日、私が別の友達と遊んでいる時、万引きをしていた友達が店員に取り押さえられて捕まった。

そこから私たちは芋づる方式で捕まって行った。

学校でも大問題になり、数名が警察沙汰にまでなった。

私は警察沙汰にはならなかったものの、その犯行がばれたスーパーへ父親と謝罪しに行くことになった。

そのスーパーで万引きしたのは、200円ほどのお菓子だった。

※

平日の登校日、制服に着替えて待機していると、父親がスーツの胸ポケットに封筒を入れていた。

きっと謝罪文か何かだろう。

父親と一緒にスーパーへ行く車内は無言だった。

スーパーに着いて従業員の会議室へ案内されると店長が待っていた。

私と父親は頭を下げ、謝罪をした。

店長は非常に素敵な笑顔で、

「中学生なので仕方がないですよ。私にもこんな時期がありました。

許せない行為ですが、誠意は見させていただいたのでお顔を上げてください」

と言った。しかし父親は、

「どうかこれだけでもお受け取りください」

と頭を下げ、封筒を差し出しながら言った。

その時に私は気付いた。

この封筒には大金が入っていると。

決して裕福な家庭ではなかったが、その封筒を見た時に、自分のしてしまったことをようやく反省した。

しかし店長は、

「私は絶対に受け取ることができません」

の一点張りで、その日は結局その封筒は渡せず、謝罪だけをして帰ることとなった。

そして帰りの車内で父親が言った。

「俺はお前の盗んだ 200円はめちゃくちゃ高いと思ってる。

そして、俺の胸ポケットに入っている 10万円はめちゃくちゃ安いと思う」

当時の私には何を言っているのか解らなかったが、心に留めて置いた。

年を追う毎に、この言葉の深さを知ることになる。

新卒一年目の初給料日、社会の波に飲まれながら、この言葉の意味を少しは理解できた気がする。

※

投稿者: 杏様

泣ける話・感動する実話まとめ|ラクリマ

最後まで読んでくださって、ありがとうございます

この話が少しでも心に残ったなら、それだけで書いた甲斐がありました。
当サイトは個人で運営しており、いただいたご支援はサーバー代やドメインの維持費に大切に使わせていただきます。

¥240 の一度きりのお支払いで応援いただけます。
お礼として、以後ずっと広告を非表示にいたします(継続課金はありません)。

くわしく見る →

メンバーなのに広告が表示される方

ブラウザを変えた・Cookieを削除した場合は、登録のメールアドレスを入力してください。