憧れた世界

公開日: ちょっと切ない話 | 子供 | 家族

梅干し(フリー写真)

飲んだくれの親父のせいで貧乏育ち。だから小さい頃は遠足の弁当が嫌いだった。

麦の混ざったご飯に梅干しと佃煮。

恥ずかしいから、

「見て~!俺オッサン弁当!父ちゃんが『お前の方が旨そうだ』って取り替えるんだよ~!」

とクラス中でネタにして凌いでいた。

貧乏に負けないためには、クラスのお調子者になるしかない。そう思っていた気がする。

その賜物か、破れた服を着ていても自転車が無くても、そんなキャラクターなのだとからかわれる事も虐められる事も無かった。

寧ろ一人っ子の同級生が服や自転車をくれたりして。

本当は悲しかったけどね。

中学に入ると毎日弁当だったが、

「いや~、毎回この弁当だとかえって親しみ湧いてさ(笑)」

と笑って食べていた。そう思うしかなかった。

母親はよく言っていたっけ。

「いつもニコニコ笑っていなさい」

せっせとやりくりして、給料日に作ってくれるコロッケとふわふわの甘い卵焼きが母ちゃんの味。

そんな母には感謝しているが、現在でも弁当だけがトラウマで、嫁さんと幼稚園児の坊主の弁当は俺が作っている。

もう毎夜仕込みが楽しいのなんのって(笑)。

三角おにぎりに、たこさんウィンナーに、ピカチュウの蒲鉾。

甘めに炒めた金平に、更に甘々の卵焼き。

可愛いピックまで付けてやる。

全部、あの頃『憧れた世界』だ。

嫁さんは「乙女か(笑)」と笑い、

息子は「あのね、父さんの卵焼き甘くて美味しいよ」と喜んでくれる。

あの頃の俺みたいに。

今はもう心から笑える。毎日幸せです。

玩具にじゃれる白猫(フリー写真)

待っていてくれた猫

小学生の頃、親戚の家に遊びに行ったら痩せてガリガリの子猫が庭に居た。 両親にせがんで家に連れて帰り、思い切り可愛がった。 猫は太って元気になり、小学生の私を途中まで迎えに来…

夕焼け(フリー素材)

大きな下り坂

夏休みに自転車でどこまで行けるかと小旅行。計画も、地図も、お金も、何も持たずに。 国道をただひたすら進んでいた。途中に大きな下り坂があって、自転車はひとりでに進む。 ペダル…

飛行機雲(フリー写真)

飛行機雲のように

「空に憧れて、空を駆けてゆく あの子の命は、飛行機雲」 その歌の通りでした。 小さい頃から、 「僕、ぜーったいパイロットになるからね!」 と言っていたあ…

眠る犬(フリー写真)

飼い犬との別れ

今年の元旦の事だった。 僕の実家にはKという犬が居た。 Kは僕が大学の頃に飼い始めて、かれこれ14年。 飼い始めの頃はまだちっちゃくて、公園に散歩に連れて行っても、懸…

恋人(フリー写真)

彼女の遺言

大学時代の同級生仲間で、1年の時から付き合っているカップルが居ました。 仲良しで、でも二人だけの世界を作っている訳ではなく、みんなと仲良くしていました。 私は女の方の一番の…

小石(フリー写真)

大切な石

私の母の話です。 私には三歳年下の弟が一人います。 姉の私から見ても、とても人懐っこく優しい性格の弟は、誰からも好かれるとても可愛い少年でした。 母は弟を溺愛してお…

家族の影(フリー写真)

家族で笑った思い出

数年前に、実家の一家の大黒柱である父が倒れた。 脳梗塞で、一命は取り留めたものの麻痺が残ってしまった。 母は親戚(成年後見人)に上手いことを言われて離婚させられた。 …

親子(フリー写真)

娘が好きだったハム太郎

娘が六歳で死んだ。 ある日突然、風呂に入れている最中に意識を失った。 直接の死因は心臓発作なのだが、持病の無い子だったので病院も不審に思ったらしく、俺は警察の事情聴取まで受…

電車内から見る駅のホーム(フリー写真)

おとうさんという言葉

その日は約束の時間ぎりぎりに、舞浜駅のホームから階段を降りた。 雑踏の中には元妻と、ミニリュックを背負った小学3年生の息子が待っていた。 半年ほど見ない間に一回り大きくなっ…

夕焼け(フリー写真)

夕焼けの絵葉書

ふと思い出したのだけど、亡くなってしまった子から絵葉書をもらったことがある。 中学生の時の隣のクラスの女の子で、病気で殆ど学校に来ないまま亡くなってしまった。 うちの学校は…