先生の目に浮かぶ涙

教室

私がその先生に出会ったのは、中学一年生の時。

明るくて元気いっぱいの先生だったけれど、怒るときはすごい勢いで怒る。

そんなパワフルな先生が、私はとても好きだった。

「この先生が担任で本当に良かった」と心から思っていました。

一年生の後半、私はいじめを受けた。

どんないじめだったかは言わないけれど、辛かった。

以前、いじめを解決するのが面倒だと感じていた経験から、誰にも言えずに我慢していました。

ある日、先生に呼び出されました。

いじめがばれていたんです。

私は仕方なく全てを話しました。

先生は私の話を真剣に聞き、険しい顔で言いました。

「彼らにはしっかり言っておくよ」

話し合いはないようでした。

私はほっとしました。

しかし、先生は「何で黙っていたの?」と聞きました。

私は上手く答えられずにいました。

そのとき、先生はしんみりと「気付いてあげられなくて、ごめんな…」と言いました。

涙を浮かべた先生の姿に、私は申し訳なくて胸が張り裂けそうになりました。

いじめの問題は見事に解決しました。

いじめっ子たちはがっつり叱られ、以後は大人しくしていました。

先生は私の気持ちを尊重し、親には言わなかったのです。

二年生に進級してからは、その先生と関わることはなくなりました。

でも、廊下で先生とすれ違うたびに胸が痛んだんです。

先生の涙は今も忘れられず、これからもずっと心に残るでしょう。

関連記事

柴犬(フリー写真)

犬が結んだ家族の絆

昔、うちでは一匹の犬を飼っていた。 名前はナオ。 ご近所の家で産まれた犬を、妹がみんなに相談もしないで貰って来たのだ。 当時うちの妹は中学生、俺は高校を卒業して働いて…

最後の夜

彼女が残した二通の手紙と、約束

彼女がこの世を去りました。病死でした。 彼女と出会ったのは、もう七年ほど前のこと。当時、彼女は大学一年生で、私は社会人。 持病があり、彼女は寂しそうに笑いながらこう言いま…

エプロン(フリーイラスト)

母のエプロン

社会人になって初めて迎えた母さんの誕生日。 「いつもありがとう」という言葉を添えて、プレゼントを渡したかった。 でも照れ臭いし、もし選んだプレゼントが気に入ってもらえなかっ…

夕焼け(フリー素材)

大きな下り坂

夏休みに自転車でどこまで行けるかと小旅行。計画も、地図も、お金も、何も持たずに。 国道をただひたすら進んでいた。途中に大きな下り坂があって、自転車はひとりでに進む。 ペダル…

ビジネス街

意外な誕生日のサプライズ

俺は入社してから、ひたすら数字を追い続けてきた。 毎日必死に働き、7年が経ち、会社からも業績を認められるようになった。 何度か昇格を経て、いくつかの部下を持つようになり、…

手紙(フリー写真)

天国の妻からの手紙

嫁が激しい闘病生活の末、若くして亡くなった。 その5年後、こんな手紙が届いた。 どうやら死期が迫った頃、未来の俺に向けて書いたものみたいだ。 ※ Dear 未来の○○ …

手を繋ぐ恋人同士(フリー写真)

遠く離れても、絆は永遠に

ある町に、幼馴染の男女が暮らしていた。 彼らは幼い頃からずっと一緒に過ごし、お互いのことを大切に思っていた。 しかしある日、男性が突然遠い町へ引っ越すことになった。 …

ラジオ

ラジオから伝わる愛

私が子供の頃から、近所に住むご夫婦に可愛がられて育ちました。その夫婦には子供がおらず、私は幼いころから特別な存在でした。 おじさんは土建屋の事務員で無口な人ですが、優しさに溢れ…

キャンドル(フリー写真)

キャンドルに懸けた想い

僕は24歳の時、当時勤めていた会社を退職して独立しました。 会社の駐車場で寝泊まりし、お子さんの寝顔以外は殆ど見ることが無いと言う上司の姿に、未来の自分の姿を重ねて怖くなったこと…

差し伸べる手(フリー写真)

俺を育ててくれた兄貴

俺を育ててくれた兄貴が正月に結婚したんだ。 兄貴と言っても、血は繋がっていないけれど。 ※ 自分が5歳の時に親父が死んでから、母親が女手一つで育ててくれた。 親父と結婚…