
4歳になる娘が、「字を教えてほしい」と言ってきました。
正直、どうせすぐ飽きるだろうと思いながらも、毎晩少しずつ教えてあげるようになりました。
「あ」はこう書くんだよ。「い」はね、こうしてぐるっと…。
鉛筆を握る小さな手が、一生懸命に真似している姿が愛おしくて、なんだかんだで私も楽しい時間になっていました。
※
ある日、娘の通っている保育園の先生から電話がありました。
「○○ちゃんから、『神様に手紙を届けてほしい』って頼まれたんです」
そう言われ、こっそりとその手紙を読んでみたそうです。
そこには、たどたどしい文字でこう書かれていました。
「いいこにするので、ぱぱをかえしてください。おねがいします」
※
私はその言葉を聞いた瞬間、頭の中が真っ白になりました。
そして次の瞬間には、受話器を持ったまま涙が止まりませんでした。
先生も、電話の向こうで泣いていました。
※
旦那は、去年の秋、交通事故で他界しました。
まだ30代でした。あまりに突然すぎて、葬儀の日のこともよく覚えていません。
娘はまだ小さく、「パパはどこに行ったの?」と何度も聞いてきました。
私はそのたびに、「お空に行ったの」と答えるしかありませんでした。
※
字を覚えたかった理由。
それは、大好きなパパに手紙を書くためだったんです。
神様にお願いして、パパを返してほしい。
その一心で、小さな手で一文字一文字覚えていたんです。
※
最近、娘が明るい声でよく言っていました。
「もう少ししたら、パパ戻って来るんだよ〜」
私はそれを、子供らしい想像だと思っていました。
でも違いました。
娘の中では、それが本当に叶うことだと信じていたのです。
「字が書けたら、神様にお願いできる」と信じていたんです。
※
私の胸は張り裂けそうでした。
小さな娘の心が、どれほど寂しさを抱えていたのか。
言葉にしなかっただけで、どれほど我慢していたのか。
私は、写真の中で微笑む旦那の顔を見ながら、何度も涙をこらえました。
けれど、涙は止まりませんでした。
娘の願いも、私の想いも、すべて旦那に届いてほしいと、ただそれだけを願いました。
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