神戸からの少女

廃墟

2年前、旅行先の駐屯地祭での出来事です。

例によって、特定の市民団体が来場し、場の雰囲気が少し重たくなっていました。そのとき、女子高生と思しき一人の少女がその団体に向かって歩いて行きました。

少女は声を強くして問いかけました。「あんたら地元の人間か?」

団体のメンバーは「私たちは全国から集まった市民団体で…」と答えましたが、少女はさらに詰め寄りました。「で、何しに来たんや?」

団体が「憲法違反である自衛隊賛美に繋がる…」と答えると、少女は自分の胸元を指さして言いました。「私は神戸の人間や。はるばる電車に乗って何しにここまで来たか解るか?」

団体の人々が困惑していると、少女は続けました。「地震で埋もれた家族を助けてくれたのは、ここの部隊の人や。寒い中ご飯を作ってくれて、風呂も沸かしてくれて、夜は夜で槍を持ってパトロールしてくれたのも、ここの部隊の人や。私は、その人たちにお礼を言いに来たんや。あんたらに解るか?消防車が来ても通り過ぎるだけの絶望感が。でもここの人らは歩いて来てくれはったんや…」

最初は怒り気味に話し始めた少女の声は、次第に涙声に変わっていきました。彼女の言葉には、地元を守る自衛隊員への深い感謝が込められていました。

この出来事は非常に印象的で、今でもはっきりと覚えています。団体は撤退しました。

少女が門をくぐった時、守衛の方は彼女に社交辞令の軽い敬礼ではなく、直立不動のまま真剣な敬礼をしました。その一挙手一投足からも、彼女の言葉がどれほど真摯に受け止められたかが伝わってきました。

関連記事

豚骨ラーメン(フリー写真)

父の記憶

俺の父は、俺が6歳の時に死んでしまった。 ガンだった。 確か亡くなった当時の年齢は34歳だったと思う。 今思えばかなりの早死にだった。 呆気なく死んでしまった…

手をつなぐ男女(フリー写真)

恩師が繋いでくれた友情

私が中学三年生だったあの夏、不登校でオタクな女の子との友情が始まりました。 きっかけは担任の先生からの一言でした。 「運動会の練習するから、彼女を呼びに行ってほしい」 …

世界一やさしい娘

昨夜、俺は嫁とケンカをした。 きっかけは本当に些細なことだった。 小学2年生になる娘の○美が、突然バイオリンを習いたいと言い出したのだ。 嫁は嬉しそうに言った。 …

お弁当グッズ(フリー写真)

海老の入ったお弁当

私の母は昔から体が弱かった。 それが理由かは分からないが、母の作る弁当はお世辞にも華やかとは言えない、質素で見映えの悪いものばかりだった。 友達に見られるのが恥ずかしくて、…

新郎新婦(フリー写真)

結婚式場の小さな奇跡

栃木県那須地域(大田原市)に『おもてなし』の心でオンリーワン人情経営の結婚式場があります。 建物は地域の建築賞を受賞(マロニエ建築デザイン賞)する程の業界最先端の建物、内容、設…

卵焼き(フリー写真)

とうちゃんの卵焼き

この前、息子の通う保育園で遠足があった。 弁当持参だったのだが、嫁が出産のため入院していたため、俺が作ることになった。 飯を炊くくらいしかしたことがないのに、弁当なんて無理…

手を繋ぐカップル(フリー写真)

幸せの在り処

もう五年も前になる。 当時無職だった俺に彼女が出来た。 彼女の悩みを聞いてあげたのが切っ掛けだった。 正直、他人事だと思って調子の良いことを言っていただけだったが、彼…

和室(フリー写真)

お父さん頑張ろうね

俺の会社の友人は、4年前に交通事故で奥さんと当時4歳の長男を亡くした。 飲酒運転の車が歩行中の二人を轢き殺すというショッキングな内容で、ワイドショーなどでも取り上げられたほど凄惨…

クリスマスプレゼント(フリー写真)

サンタさんから頼まれた

※編注: このお話は、東日本大震災発生から5日後の3月16日に2ちゃんねるに書き込まれました。 ※ 当方、宮城県民。 朝からスーパーに並んでいたのだが、私の前に母親と泣きべそ…

花嫁

父のノート

大学生の時、友人Aちゃんと彼氏B君は同棲を始めました。二人は若く、両親からは「結婚はまだまだ先のこと。責任ある交際を」と言われていました。 大学3年のとき、Aちゃんの家族にのみ…