死の淵にいた私を救ってくれた妻

公開日: 夫婦 | 心温まる話

救急車(フリー写真)

私はあの日、緊急搬送されました。

生まれて初めて救急車に乗りました。

心臓の3分の2は停止していたそうです。

今から7年前の事を書きます。

私はフィールドエンジニアの仕事をしています。

客先に訪問し、インターネット設定やパソコンの新規設定などをする仕事です。

ちょうど年末年始の時期、多忙で毎日の平均睡眠時間が3~4時間くらいで休みなく稼働していました。

階段を上るにも、手すりにしっかり掴まらないと上れない状態でした。

それも仕事の過労のせいだろうと思っていました。

また、別に激しい運動をしている訳でもないのに、呼吸が早くなっていました。

寝る時は、横になると更に苦しくなりました。

その日は珍しくパソコンの納品が早く終わったので、

時間ができたので念のため病院へ行き、処方箋を出してもらおうと思いました。

医療関係に勤めている方は、上記の症状から私の状況を推測できるかもしれません。

しかし当時の私には全く自覚症状がありませんでした。

何せ当日まで普通に仕事をしていましたから。

私は呼吸器系の病院へ行き、診察していただきました。

レントゲン検査をした途端、病院の対応が一変しました。

急にベッドに横になるよう指示され、そのまま暫く待つように言われました。

正直、何が起こっているのか私には分かりませんでした。

暫くすると救急車のサイレン音が聞こえてきました。

どうやら私をお迎えに来たようでした。

そこで初めて、これから専門の病院へ行って治療してもらいますと説明されました。

ここで人生初となる救急車に乗る事になりました。

救急車の中には色々な機械が複雑に配置されていました。

そこのベットに固定されるのですが、寝ながら車が移動するので何か妙な感じでした。

救急隊員さんが定期的に、私に名前を言うよう求めました。

はっきりと意識はあったのですが、車酔いで段々と気分が悪くなって行きました。

これは運転が荒いという訳ではなく、単に私が車酔いをしたということですが。

しかし、そこで不思議な感覚に囚われました。

私のベットの隣に妻が居るように感じたのです。

そんな事は、有り得ないはずなのですが….。

はっきりと、私に寄り添うように、確かにそこに居るのを感じました。

妻は、8年前に乳がんでこの世を去っていたのです。

私が集中治療室から一般病棟に移った時、

私のベットの隣の白い壁に、一瞬ですが女性のシルエットが見えた気がしました。

妻がまだ心配して私の傍に居てくれているのだと思いました。

後で聞いた話では、身体中に血栓が出来ていたそうです。

薬治療で血栓や肺に溜まった水を出した事で、退院時の体重が10キロも少なくなっていました。

おかげさまで後遺症もなく、今は普通に仕事が出来ています。

これは亡くなった妻が私を助けてくれたからと思っております。

今でも妻には感謝していますし、愛しています。

投稿者: Yama様

関連記事

お茶碗(フリー写真)

テーブルのお皿

私と淳子は、結婚して社宅で暮らし始めました。 台所には四人がやっと座れる小さなテーブルを置き、そこにピカピカの二枚のお皿が並びます。 新しい生活が始まることを感じました。 …

虹

コロとの別れ

我が家にはコロという名前の雑種犬がいました。彼は長く白と茶の毛がふわふわした美しい犬で、私が学生の頃、毎日学校からの帰り道で、通学路が見える場所に座って私の帰りを待っていました。賢く…

手を繋いで歩く夫婦(フリー写真)

たった一つの記憶

私の夫は、結婚する前に脳の病気で倒れてしまい、死の淵を彷徨いました。 私がそれを知ったのは、倒れてから5日も経ってからでした。 夫の家族が病院に駆け付け、携帯電話を見て私の…

犬(フリー写真)

良い犬の話

良い人じゃなくて、良い犬の話。 知り合いのお爺さんが愛犬と山道を散歩していて、途中のベンチで座って一休みしていたら…。 蛇(名前は忘れたが毒を持っている)がお爺さんに齧り付…

セイコーマート(フリー写真)

小さな子供達の友情

俺はセイコーマートで働いて三年目になる。 いつも買い物に来る小さな子の話を一つ。 その子は生まれつき目が見えないらしく、白い杖をついて母親と一緒に週二、三度うちの店を訪れる…

結婚式(フリー写真)

前彼の祝福

学生時代、彼氏を事故で亡くした。 引き摺りまくって、もう新しい彼氏も結婚も要らないと荒み、誘いも蹴り告白も断った。 お一人様の老後を設計していたのだけど、ある日いきなりご縁…

バラの花束(フリー写真)

大きなバラの花束

接客を何年か担当してくれていた優秀な女性スタッフが、その店を辞めることになった。 店長は、一生懸命仕事をしてくれた彼女に何かお礼がしたかった。 いよいよ彼女の最後の出勤の日…

絵馬(フリー写真)

絵馬に書かれた願い

この前、近くの神社まで散歩したんだ。 絵馬が沢山あって、 『あまり良い趣味じゃないな』 と思いながらも、他人の色々な願い事を見ていたんだ。 「大学に合格しますよ…

赤ちゃん(フリー写真)

本当に価値がある存在

君がママのお腹に居ると判った時、ママは涙ぐんでいた。 妊娠したと聞いて僕は、 「おーそうか」 なんて冷静に言おうとしたけど、すぐに涙が出たんだ。 決して口には出…

カラオケのマイク(フリー写真)

お金以上のもの

パパ、ママ、小学生の三姉妹の仲良し五人家族。 ある日、ママが交通事故で亡くなってしまいました。 慣れない家事にお父さんも奮闘。 タマゴ焼きを焦がしたり、洗濯物を皺だら…