祖父の傷跡

公開日: 悲しい話 | 戦時中の話

従軍(フリー写真)

俺の爺さんは戦地で足を撃たれたらしい。

撤退命令が出て皆急いで撤退していたのだが、爺さんは歩けなかった。

隊長に、

「自分は歩けない。足手まといになるから置いて行って下さい」

と言うと、黙って何時間も背負って逃げてくれたらしい。

撤退場所に着いて応急手当が終わり、お礼を言おうと隊長を探すと、上官は再び出撃の準備をしていたらしい。

「ありがとうございました。このご恩は一生忘れません」

と泣きながら言うと、隊長が

「お前は怪我をしているから日本に帰れる。俺は今から祖国の為に戦って来る。多分生きて日本には帰れないだろう」

と言った。爺さんは、

「自分もここに残ります」

と言いかけたところで、

「泣く事は無い。死ねば日本に帰れる。靖国で会おう」

と上官は言っていたらしい。

爺さんの足には酷い傷跡が残っていたのだが、その傷を見る度にその隊長を思い出すらしい。

爺さんはもう亡くなってしまったのだけど、亡くなる少し前に

「死んだら隊長に会える。やっときちんとお礼を言える。随分遅くなってしまった」

と呟いていたよ。

関連記事

学校(フリー背景素材)

たくちゃん

その人は一個上の先輩で、同級生や後輩からも『たくちゃん』と呼ばれていた。 初めて話したのは小学校の運動会の時。 俺の小学校は、全学年ごちゃ混ぜで行われる。俺は青組みだった。…

手のひら(フリー写真)

出会い

昔、美術館でバイトをしていた。 その日の仕事は、地元の公募展の受け付け作業。 一緒に審査員の先生も一人同席してくれる。 その時に同席してくれたのは、優しいおじいちゃん…

民家

救いの手

3年前の夏、金融屋として働いていた私は、いつものように債務者の家を訪れました。しかし、親は姿を消し、5歳の男の子と3歳の女の子だけが残されていました。 私はまだ新米で、恐ろしい…

ポメラニアン(フリー写真)

愛の形

私はあるペットクリニックに勤めています。 そこで起こった悲しい出来事をお話します。 ※ 40代くらいの男性がポメラニアンを連れてよく来ていました。 その人が購…

蒸気機関車(フリー写真)

まるで紙吹雪のように

戦後間もない頃、日本人の女子学生であるA子さんがアメリカのニューヨークに留学しました。 戦争直後、日本が負けたばかりの頃のことです。人種差別や虐めにも遭いました。 A子さ…

月(フリー写真)

月に願いを

俺は今までに三度神頼みをしたことがあった。 一度目は俺が七歳で両親が離婚し、父方の祖父母に預けられていた時。 祖父母はとても厳しく、おまけに 「お前なんて生まれて来な…

雲海

空の上の和解

二十歳でヨーロッパを旅していた時の実話です。ルフトハンザの国内線でフランクフルト上空にいた時、隣に座ったアメリカ人の老紳士に話しかけられました。日本の素晴らしさについて談笑していると…

病室

足りない時間

私は医師として、人の死に接する機会が少なくありません。しかし、ある日の診察が、私の心を特別に痛めつけました。 少し前、一人の若者に余命宣告をすることになりました。 「誠に…

恋人同士(フリー写真)

彼女のために出来ること

まだ一年程前の事です。 彼女がこの世を去りました。病死です。 その彼女と出会ったのは7年前でした。彼女はその頃、大学1年生でした。 彼女には持病があり、 「あと…

ネックレス(フリー写真)

大好きなあなた

大好きなあなたは、今も笑っているのでしょうか。 小さい頃に何故かおじいちゃんに引き取られた私(当時7歳)は、そこで三人の男の子に出会いました。 9歳の凄く元気なLと、12歳…