飼い犬との別れ

公開日: ちょっと切ない話 | ペット |

眠る犬(フリー写真)

今年の元旦の事だった。

僕の実家にはKという犬が居た。

Kは僕が大学の頃に飼い始めて、かれこれ14年。

飼い始めの頃はまだちっちゃくて、公園に散歩に連れて行っても、懸命に付いて来るのが精一杯だったのを憶えている。

大学時代は時間の余裕もあったから、毎日散歩をしていたよ。

散歩用のロープを持ち出すと大はしゃぎして、飛び付いて来たりしてな。

お手とかお座りを教えたのも懐かしい。

その後、大学を卒業し社会人になり、一人暮らしを始めると、大好きなKに会うことも出来なくなった。

正月やお盆に帰ると、忘れもしないで飛び付いて来る。

ほんとに、可愛いやつだな。

そんな感じで、約10年が過ぎた。

僕も仕事が忙しくなり、なかなか実家にも帰れない年が続いた。

去年の暮れ、仕事も落ち着いたので正月は実家で過ごそうと、久々に実家に帰った。

Kに久々に会った。

相変わらず尻尾をぶんぶん振っている。

相変わらず、飛び付いて来る。

僕も久々の対面が嬉しく、思い切り可愛がった。

その日の夕食時、母から最近Kは年のせいか元気が無く、寝てばかりいると聞いた。

そんなこんなで、明日の朝はみんなで、元朝参りにでも行こうと早めに寝た。

次の朝、起きて散歩してあげようと思いKの名前を呼んだ。

何故か犬小屋で、寝たままだった。

前日に母が言っていたのはこの事かと思いながら、小屋に近付いて名前を呼び首元をさすると、いつもの体の温もりは無かった。

Kは天国へ逝った。

理解したくはなかったが、それが現実だった。

去年は戌年。

Kは戌年を全うして生き抜きました。

関連記事

夫婦の後ろ姿

涙のビーフシチュー

昨日の朝、女房と喧嘩をした。いや、喧嘩なんてもんじゃない。酷いことをしてしまった。 原因は、前の晩の夜更かし。寝不足で不機嫌なまま起きた俺の、最悪の寝起きだった。 「仕事…

キャンドル

灯り続ける希望の光

24歳の時、僕は会社を退職し、独立を決意しました。上司の姿から自分の未来を映し出し、恐れを感じたからです。しかし現実は甘くなく、厳しい毎日が始まりました。25歳で月収7万円、食事は白…

通帳(フリー写真)

ばあちゃんの封筒

糖尿病を患っていて、目が見えなかったばあちゃん。 一番家が近くて、よく遊びに来る私を随分可愛がってくれた。 思えば、小さい頃の記憶は、殆どばあちゃんと一緒に居た気がする(母…

恋人同士(フリー写真)

彼女のために出来ること

まだ一年程前の事です。 彼女がこの世を去りました。病死です。 その彼女と出会ったのは7年前でした。彼女はその頃、大学1年生でした。 彼女には持病があり、 「あと…

シャム猫(フリー写真)

父親と猫のミル

家にはもう十年飼っていた猫が居たんだ。 家の前は昔、大きな広場で、その猫はその広場の片隅にある車の中で寝ていた子猫だった。 俺と姉ちゃんでその猫を家の庭まで連れ帰って来ちゃ…

富士山

雪と一緒にいるから

「ゆきをとってきて…おねがい、ゆきがみたい…」 あなたはそう言って、季節外れの雪をほしがりましたね。 ※ あれから、何年もの月日が流れました。 あなたは、いま…

高校野球のボール

甲子園に連れていく約束

十年前、彼女が亡くなった。 当時、俺たちは高校三年生。同じ高校に通い、同じ野球部に所属していた。 俺たちは近所に住む幼馴染だった。俺は、野球好きの両親に育てられたこともあ…

デジカメを持つ女性(フリー写真)

母がデジカメを買った

機械音痴の母がデジカメを買った。 とても嬉しいらしく、はしゃぎながら色々なものを撮っていた。 ※ 何日か経った頃、メモリが一杯で写せなくなったらしく 「どうすればいいの…

手を繋ぐカップル(フリー写真)

彼女に宛てた手紙

ゆいへ なあ、俺もうダメみてぇだ。 何でだ? お前に出会うまでは死にたいぐらい毎日が退屈だった。 でも今は俺すげえ生きたい。 何で病気に勝てねえんだろ? …

妊婦さん(フリー写真)

私の宝物

中学2年生の夏から一年間も入院した。 退院して間もなく高校受験。 高校生になると、下宿生活になった…。 高校を卒業して就職。 田舎を飛び出して、会社の寮に入った…