桜と最後の嘘
僕は良いところなど一つも無いと言って良い程、嫌な人間だった。 ルックスに自信は無く、頭も良くはない。そして、人に平気で嘘を吐く卑怯者。 僕に構う人など誰も居なか…
続きを読む:桜と最後の嘘僕は良いところなど一つも無いと言って良い程、嫌な人間だった。 ルックスに自信は無く、頭も良くはない。そして、人に平気で嘘を吐く卑怯者。 僕に構う人など誰も居なか…
続きを読む:桜と最後の嘘朝、私は妻がよそった味噌汁を腕で払い、底の焦げた鍋を床に落とした。弁当も持たずに家を出た。夜、二階の窓に明かりがあり、玉ねぎとバターの匂いがした。妻がその鍋で四…
続きを読む:底の焦げた鍋で仲直りした自分には77歳のばあちゃんがいる。 数ヶ月前にじいちゃんが亡くなり、最近はあまり元気が無い。 ばあちゃんの家には車で20分程で行ける距離だから、父と定期的に行く…
続きを読む:祖父母からのお小遣い事故で足が動かなくなった私が通れる店は、なぜか毎年少しずつ増えていきました。商店街の入口にはめられた木のスロープは、どれも手前の角の落とし方が同じです。乾物屋の…
続きを読む:木のスロープを毎月削る人幼稚園の頃から仲が良かった親友が居た。 俺たちはいつも4人で遊んでいた。 どんな時も、一緒に遊んでいた。 彼女についての相談をしたり馬鹿言ったり、喧嘩したり。 …
続きを読む:友達の大切さ高知・四万十の川漁師の家に生まれた私が、二十七歳ではじめて知った自分の出生の話です。窪川の祖母の家の大黒柱に二本ずつ並んでいた鉛筆の傷。その薄い三本を刻んでいた…
続きを読む:姉が刻んだ二本目の傷僕は24歳の時、当時勤めていた会社を退職して独立しました。 会社の駐車場で寝泊まりし、お子さんの寝顔以外は殆ど見ることが無いと言う上司の姿に、未来の自分の姿を重…
続きを読む:キャンドルに懸けた想い自分でも理由は判らないが、気が付けば仕事のやる気を失くしていた。 会社を欠勤し、それが数日続いたある日の夜、強面の上司が自宅に来た。 最後通告かなと思いながら、…
続きを読む:痛みを知る者二十二歳の老犬を連れて動物病院へ通う大谷さんは、診察のたびに首輪を外して自分の手首に巻く人でした。小雨の夕方にタクシーを断り、歩いて帰ったその背中の意味を、私は…
続きを読む:小雨の中を歩いて帰った人沼津の幼稚園のバスで隣に座っていた美咲と、私は二十歳から一緒に暮らした。プロポーズのために、眠る美咲の薬指に白い糸を回して指輪のサイズを測った九月の夜。前々日に…
続きを読む:指輪のサイズを糸で測った夜小学校高学年の時、優等生だった。 勉強もスポーツもできたし、児童会とか何かの代表はいつも役が回って来た。 確かに、良く言えば利発な子供だったと思う。 もう一人の…
続きを読む:素敵なお弁当待ち合わせた彼女を待っていて見かけたのは、大学生風のカップルだった。 男の子が女の子の正面に立って、何かしきりに手を動かしていた。手話だ。 彼はやっと手話を覚え…
続きを読む:秘密で手話を大好きだった彼女と別れた。 理由はシンプル。 俺が早稲田に落ちて浪人が決定したから。 「二人とも大学卒業したら結婚しようね」 こう言ってくれた彼女。 でも彼女は…
続きを読む:もう戻って来ない彼女伊万里の坂の下で毎朝遅刻していた中学生は、私の部屋に来るたび畳の毛を手のひらで集めて帰りました。一年後に学園から戻ってきたその子の鞄から出てきた白い封筒が、その…
続きを読む:あの子が畳の毛を集めて帰る夜山形・庄内の羽黒門前町で絵馬の板を仕上げていた祖母は、代金の入っていない小絵馬の裏にだけ墨で点をひとつ打ち、焼かずに残していました。掛け所の四十一枚と、九つの冬…
続きを読む:絵馬に書かれた願いラクリマを応援する
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