届かぬ想い

関係を迫ると、「あなたは紳士じゃない」と言われた。
けれど、関係を迫らなければ、「あなたは男じゃない」と責められた。
何度も君の部屋を訪ねると、「もっと一人の時間が欲しい」と言われた。
しかし、あまり顔を出さないと、「まさか二股かけてるんじゃないの?」と疑われた。
流行りの格好良い服を着れば、「流行に流されて軽薄だね」と嘲られた。
かといって、着なければ「あなたって本当にダサいわね」とため息をつかれた。
話を聞きながら少しでも口を挟めば、「黙って聞いてよ」と苛立たれた。
黙って相槌だけ打てば、「何か言ってくれてもいいじゃない」と拗ねられた。
待ち合わせに30分遅れてしまった日には、「ひどい、どれだけ待たされたと思ってるの?」と怒られた。
でも君が30分遅れても、「え? たった30分じゃない」と笑って済まされた。
僕がやきもちを焼けば、「そんなふうに縛られるのは嫌」と嫌がられた。
けれどやきもちを焼かなければ、「もう愛してくれてないのね」と呟かれた。
「そうだね」と君に賛成すれば、「自分の考えはないの?」と呆れられた。
「それは違うんじゃない?」と反対すれば、「あなたって本当に理解がない」と拒まれた。
「愛してるよ」と言えば、「口が軽い人ね」と笑われた。
「大好きだよ」と言えば、「それしか言えないの?」と目を伏せられた。
だけど、それでも、僕は君を愛していた。
そして今、君はもうこの世にはいない。
静かに眠るその墓前に、僕は君の好きだった花を供える。
僕は泣いている。言葉にできないほどの涙を、声もなく流している。
でも、墓の向こうで眠る君は、まるですべてを許したかのように、安らかに笑っていた。
もう、何をしても、何を言っても、君は返事をしてくれない。
そして今ようやく気づいた。
君は、いつだって――本当は僕に、ただ寄り添って欲しかっただけなんだと。