彼女が遺した手紙
私(晃彦)には幼稚園から連れ添ってきた恋人(美咲)がいる。
私が高校を卒業し、就職してからも同居し、貧乏ながらも支えてくれた掛け替えのない存在。
プロポーズの決心をしてから地道に準備し、洒落たお店を予約した。
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そしてプロポーズ前々日、会社から帰った私は美咲がお風呂に入っていることを確認し、指輪の確認やプロポーズのセリフを考えていた。
その時、突然ガタガタッと音がしたため『お風呂場で何かあったのかな?』と思い向かった。
そこには倒れている美咲がいて、私は頭が真っ白になった。
救急車に運ばれ診察等が終わり、医者より現状を言い渡された。
「美咲さんは脳腫瘍があり、もう長くありません。はっきり申しますと手遅れの状態です」
私は運命を呪うと同時に、この世界に神様なんていないことを実感した。
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翌日、美咲の意識が戻り、現状説明をどう伝えるか迷っていた。
しかし、美咲は全て解っているかのように、
「ごめんね」
と言った。私は堪えきれず泣いてしまった。
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そして私は決心をし、翌日病院のベッドでプロポーズをした。
美咲は嬉しいような悲しいような顔をしたが、
「ありがとう、ごめんね」
と言いながら指輪をはめてくれた。
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病状が悪化してからは体が思うように動かない状態だったが、仕事が終わってからも毎日病院に通い、残りの時間を噛み締めるように過ごしていた。
しかし運命は残酷で、2ヶ月程過ぎた頃、私が付き添う中病院のベッドで、美咲は笑顔のまま息を引き取った。
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その後の私は、小さな頃から美咲に支えられ生きてきた支えが突然なくなり、何もかもが分からなくってしまい、仕事も手に付かず生きることに四苦八苦していた。
上司からは休みを与えられ、病室より持って帰ってきた美咲の所持品を整理していた時、メモ帳に挟まれた手紙を見つけた。それは美咲からの遺言だった。
『こんな時、何を書いていいのか分からないね。
小さい頃からの付き合いだけど、本当に晃彦と出会えて一緒にいられて幸せだった。
出来ることならおじいちゃん、おばあちゃんになるまでずっと一緒にいたかった。
…ごめんね。でもね、こんな私でも夢に見たプロポーズをしてもらえて、とても嬉しかったです。
晃彦にはまだ先があるから新しい人見つけて、今度こそ幸せな家庭を築いてね』
この後はこれまでの思い出がいっぱい書いてあり、最後に
『これまでありがとう。心から晃彦を愛してます。…美咲』
と綴られていた。
私は笑顔のまま涙を流し、美咲がもういないということ、お互いに心から通じ合っていたことを現実として受け止め、美咲の分もしっかり生きようと決心した。
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それから1年経った現在、独りの生活に慣れ、それでも気が付けば美咲と撮った写真を見てしまうけど、前を向いて足掻きながらも精一杯生きています。
「美咲。私は独りでも何とかなりそうだ。美咲が残してくれた手紙のおかげだよ。ありがとう…私も心から美咲を愛しています」