大好きだった彼

公開日: 恋愛 | 悲しい話 | 長編

カップル(フリー写真)

あれは今から1年半前。大学3年になりたての春。

大学の授業が終わり、帰り支度をしている時に携帯が鳴った。

着信画面を見ると、彼の親友でした。

珍しいなと思って電話に出ると、その人はこう言いました。

「○○さん(私)、落ち着いて聞いて。

△△(彼)が、事故に遭った」

あまりに突然の、予想もしない事態に、私は固まりました。

「彼は? どうなの? 無事なの??」

私の台詞に、その人は暫く沈黙しました。

そして…搾り出すように、その人は言葉を発しました。

「…即死だって…!!!」

聞きたくなかった、最悪の台詞。

その言葉が信じられず、私はただひたすら、

「嘘でしょ? ねぇ、△△が…そんな、嘘でしょ??」

と繰り返すことしか出来ませんでした。

その後の事は、よく覚えていません。

ただ、私の様子が尋常でない事に気付いた友人が、電話を代わってくれたこと。

その後、彼女に連れられて、彼の親友が教えてくれたという病院へ行ったことは覚えています。

最後に彼と『会った』のは、告別式の日のことです。

黒いスーツを着て告別式に参列しても、お焼香をしても、彼がいなくなってしまったという実感は全く湧きませんでした。

周りの人たちは号泣というくらい泣いているのに、私は全く涙が出ませんでした。

出棺直前。

花を入れるため、私は棺に近付きました。

初めて見る、もう息をしていない彼の顔。

死んでいるなんて信じられないくらい綺麗な、眠るような顔でした。

現実感がないまま、そんな彼を見つめました。

そして、いよいよ出棺の時。

彼の棺は蓋をされ、杭を打ち込まれ…何人もの人の手により、持ち上げられました。

そして、霊柩車の中へ運び込まれ…。

その時、私は初めて彼が亡くなった、という現実を目の当たりにしました。

この後の事も、よく覚えていません。

一緒にいた友人によれば、今までに見たこともないくらい取り乱していたようです。

「いやだ!△△!!どこに行っちゃうの? 行かないで!!

やめて!!△△!!!行かないで、行かないで!!」

ひたすらこういった事を叫び、泣き喚き、走り去る霊柩車を追いかけようとし、周りにいた友人達に止められていたそうです。

そして、友人にすがりつき、泣き崩れたそうです(ここは少し覚えています)。

彼の死を実感してからというもの、私は抜け殻のような生活を送っていました。

学校には毎日通い、授業もきちんと受け、バイトも続けました。

しかし、いつも空虚を抱えた、魂の入っていない抜け殻のような状態でした。

そして夜になると、彼との思い出の品々、写真を眺め、泣き続けていました。

そんな私を心配し、両親や友人が励ましに来るのですが…。

当時の私の心には、何も届きませんでした。

いっそ、死んで彼のところに行きたい。本気で考えたこともあります。

しかし、それから1年後の彼の命日。

私は、一番最初に電話をくれた彼の親友と共に、お墓参りへ向かいました。

そこで、やはりお墓参りに来ていた彼のご両親と会いました。

彼のお母さんが、告別式で一度会っただけの私を覚えていてくれて、話しかけてきてくれました。

そして、こう言われました。

「あの子を好きになってくれてありがとう。

あなたとお付き合いする事が出来て、あの子も幸せだったと思うわ。

でも、あの子はもうこの世にいない。

あの子があなたを幸せにする事は、もう叶わない事なの。

どうかあの子の事は過去にして、幸せになれる道を見つけて。

あなたがいつまでも悲しい顔をしていたら、きっとあの子は悲しむから…」

その言葉を聞き…私は周りの目も気にせず、号泣しました。

そんな私を、彼のお母さんは抱き締め、涙声で

「ありがとう」

と繰り返しながら背中をたたき続けてくれました。

それを境に、私は抜け殻のような生活から抜け出す気力が出るようになりました。

いつまでも悲しんでいてはいけない。

私が泣くたび、彼は困り果て、悲しんでいたじゃないか。

彼は元気な私が、何より好きだったはず…。

そう思い、段々と以前の生活を取り戻す事が出来るようになりました。

そして今、彼が亡くなって一年半。

私は何とかやっています。

今でもどうしようもない喪失感や悲しみに襲われることはあるけれど…。

彼を悲しませないためにも、笑顔で日々を過ごせるように心掛けたいと思っています。

関連記事

ビル

予期せぬ守り神

内定式で初めて彼女と出会った。彼女は私たちの同期だった。 彼女は聡明の代名詞のような人だった。学生時代の論文で賞を受けるほどの才女で、周囲からは期待の新星と見なされていた。 …

ご縁の糸(フリー写真)

風変わりなアピール

30歳になる少し前に離婚した。 その一年半後に現在の妻を紹介された。 高校を出て7年間、妻は俺の祖母の兄が営む田舎町の店舗に勤めていた。 安い給料なのに真面目に働く良…

夏休みの情景(フリー写真)

バス停の女の子

俺が小学3年生の夏休みの話。 今の今までマジで忘れていた。 小学校の夏休みとか、遊びまくった覚えしかない。 俺は近所の男子と夏休み中、開放されていた学校の校庭で、午後…

震災の写真

震災を生き抜く少年の記録

「お父さんが軽トラで帰っていった姿を見ました。津波にのみ込まれませんように」と祈っていました。 巨大地震と大津波が東日本を襲ったあの日、子供たちは何を見、その後をどう生きたのか…

カレーライス(フリー写真)

クロベーの笑顔

俺が小学生の頃の話。 同じクラスに黒田平一(仮名)、通称クロベーというやつが居たんだ。 クロベーの家は母子家庭で、母親とクロベーと弟の3人暮らしだった。 クロベーの一…

砂浜を歩くカップル(フリー写真)

当たり前の日常

小さな頃から、私と彼はいつも一緒でした。 周りがカップルに間違えるほどの仲でした。 私が彼に恋愛感情を抱いていると気付いたのは、高校3年生の時です。 今思うと、その前…

花と手紙(フリー写真)

彼女が遺した手紙

私(晃彦)には幼稚園から連れ添ってきた恋人(美咲)がいる。 私が高校を卒業し、就職してからも同居し、貧乏ながらも支えてくれた掛け替えのない存在。 プロポーズの決心をしてから…

桜(フリー写真)

優しい彼の嘘

私には付き合って一年の彼氏がいました。 その彼氏(Sとします)には持病があり、心臓を患っていました。 一緒にご飯を食べていると胸を押さえて苦しがったり、偶に倒れたり、何度も…

夕日とカップル(フリー写真)

優しい貴方へ

元気ですか。 今、何処に居ますか。 生きていますか。 悪い事はもうしていませんか。 貴方と離れてから7年が経ちました。 貴方は私に言いました。 「沢…

教室(フリー写真)

虐めの現実

俺は高校生の時、授業以外の時間はいつも小説を読んで過ごしていた。 まあ、それくらいしかやる事がなかっただけだけどね。 ある日、体育の授業が終わり教室に帰って来て、いつもの…