少年への優しい嘘
公開日: 心温まる話
アメリカのとある地方に、野球観戦の大好きな、でも目の見えない少年が居ました。
少年は大リーグ屈指のスラッガーである選手に憧れています。
※
少年はその選手へファンレターを綴りました。
『ぼくは、めがみえません。
でも、毎日あなたのホームランをたのしみにしています。
しゅじゅつをすれば見えるようになるのですが、こわくてたまりません。
あなたのようなつよいこころがほしい。
ぼくのヒーローへ』
少年のことがマスコミの目に留まり、二人の対面が実現することになりました。
カメラのフラッシュの中、ヒーローと少年はこう約束します。
今度の試合でホームランを放てば、少年は勇気を持って手術に臨む、と。
※
そして、その試合が始まりました。
ヒーローの最後の打席。2ストライク3ボール。
テレビや新聞を見た多くのファンが、スタジアムで固唾を呑んで見守り、少年自身もテレビ中継を祈る思いで聞いています。
ピッチャーが投げた最後のボールは…、大きな空振りと共に、キャッチャーミットに突き刺さりました。
全米から大きな溜め息が漏れようとしたその時、スタジアムの実況がこう伝えました。
「ホームラン!月にまで届きそうな、大きな大きなホームランです!」