震災後のファミレスにて

レストラン

阪神大震災後のことです。当時、私はあるファミレスで働いており、震災後にはバイキングメニューを無料で提供することになりました。

開店と同時に店内は満席になり、外には長い行列ができました。店内の忙しさは繁忙期を上回るものでした。

中には着の身着のまま来店する人々もおり、他のお客さんが「自分は家が残っているので」と上着を提供する姿を目の当たりにして、感動して涙がにじむこともありました。

お昼を過ぎたころ、行列には異彩を放つ若い男女二組が加わりました。彼らは派手な装飾を身に着け、使い捨てカメラで写真を撮りながら騒いでいました。

他のお客さんが静かに待っている中、彼らは「早く席に案内してよ」と不平を言ったり、座ったらすぐに「ビールを4つ」「パフェが食べたい」と要求しました。

その態度に私が注意しようとしたところ、一人の老人が涙ながらに彼らに向かって「あなたたちが観光で来たのなら、どうか帰ってください」と訴えました。

しかし彼らはそれを笑い飛ばすだけで、「関係ないよ」と答えました。

私が「申し訳ありませんが、出て行ってください」と声をかけたその時、ある男性が前に出てきました。

彼は刺青を見せつけながら若者たちの前に立ち、「おい、兄ちゃんたち。さっさと家に帰って、テレビでも見てなさい」と一喝しました。

若者たちは何も言わず、高級車で退散しました。

彼らが去った後、その男性は帰る前に「店員さんはケンカしないほうがいい。そういうのは僕たちの仕事だから」と微笑みながら言いました。

そして、「食事ありがとう。美味しかったよ」と感謝の言葉を残し、店を後にしました。

彼の少し引きずる足取りと、ヒビ割れたサングラスが印象的でした。その日、私は多くのことを学び、感じることができました。


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