再建の約束

公開日: 心温まる話 | 震災に関する話

瓦礫

太陽の光がほんのりと残骸の上を照らしていた。災害により変わり果てた風景の中、一つの臨時の避難所が静かな緊張感を持っていた。

「若者の代表として、一つだけ言いたいことがあります…」

荒廃したこの場所で、青春の輝きを持った一人の青年が立ち上がった。

彼の手には、希望と絆の言葉を伝えるための拡声器が握られていた。

彼の真っ赤に泣き腫らした瞳からは、深い悲しみと希望が滴るような涙が流れていた。

その涙を拭いつつ、彼は声を震わせながらも、力強くメッセージを続けた。

「これから僕らが、この神戸を立て直して行かなければなりません。

背中を押してくれたのは、毎日、毎時、ここで命を懸けて支えてくれた自衛隊の人達です」

彼の言葉に、周囲の大人達も心を打たれ、思わず涙を流す。

彼らの中には、家族や友人を失った者も多い。

しかし、その痛みを乗り越えて、新しい希望を見つけようとする強い意志が、青年の言葉に共鳴していた。

そして、その場にいた多くの人々が、自衛隊・災害派遣部隊の勇敢な人々へ感謝の気持ちを表現するために、一斉に彼らの方へと駆け寄った。

「長い間、ありがとうございました!」

感謝の心を込めて、青年は大声で叫んだ。

そして、彼は一人の自衛官の胸に飛び込み、情熱的な涙を流した。

その自衛官も、彼を力強く抱き締め、二人は互いの温かさを感じながら涙を共有した。

風に舞う『自衛隊さん、ありがとう』の横断幕。

その下で、多くの人々と自衛隊の人々が抱き合い、感謝と希望の涙を流していた。

この日、神戸で繰り広げられた感動のシーンは、自衛隊の大きな任務の完結を告げ、同時に新しい未来への第一歩となった。


note 開設のお知らせ

いつも当ブログをご愛読いただき、誠にありがとうございます。
今後もこちらでの更新は続けてまいりますが、note では、より頻度高く記事を投稿しております。

同じテーマの別エピソードも掲載しておりますので、併せてご覧いただけますと幸いです。

泣ける話・感動の実話まとめ - ラクリマ | note

最新情報は ラクリマ公式 X アカウント にて随時発信しております。ぜひフォローいただけますと幸いです。

関連記事

オムライス(フリー写真)

本当の友達

二十年ほど前の話。 当時、俺の家は片親で凄く貧乏だった。 子供三人を養うために、母ちゃんは夜も寝ないで働いていた。 それでもどん底の生活だった…。 俺は中学を卒…

飛行機

航空自衛隊の物語

航空自衛隊の厳しさと、絆の深さを語る先輩からの物語。 航空自衛隊は、その名の通り、国の空を守る重要な任務を担う組織だ。 入隊する者は、数々の厳しい試験を乗り越え、日々の訓…

結婚式場(フリー写真)

叔父さんの血

俺には腹違いの兄貴が居る。 俺が小学5年生、兄貴が大学生の時に、両親が子連れ同士の再婚。 一周りも年が離れていたせいか、何だか打ち解けられないままだった。 ※ 大学入試…

赤ちゃん(フリー写真)

本当に価値がある存在

君がママのお腹に居ると判った時、ママは涙ぐんでいた。 妊娠したと聞いて僕は、 「おーそうか」 なんて冷静に言おうとしたけど、すぐに涙が出たんだ。 決して口には出…

昼寝中の猫(フリー写真)

ずうずうしい野良猫

お悩み相談 Q. 通って来る野良猫が大変ずうずうしく、困っています。 始めは家の外でみゃーみゃー鳴いて飯をねだる程度だったのですが、この寒空の下では辛かろうと一度玄関に泊め…

ビル

予期せぬ守り神

内定式で初めて彼女と出会った。彼女は私たちの同期だった。 彼女は聡明の代名詞のような人だった。学生時代の論文で賞を受けるほどの才女で、周囲からは期待の新星と見なされていた。 …

モデルルーム

展示場での再会

その日、私たち家族は新築の夢を叶えるべく、住宅展示場を訪れていました。両親と妹、そして私。私だけが初めての参加で、新しい家に対する期待で胸が躍っていました。 展示場の家々はどれ…

桜(フリー写真)

天国のおじいちゃんより

中学卒業が間近に迫ったある日のことです。 今までお世話になった人に手紙を書きましょう、という授業がありました。 みんなは友人や部活の顧問宛に一生懸命、手紙を書いていました…

母の手

あのハンバーグの味

私の母は生まれながらにして両腕に障害を持っていました。 そのため、家庭の料理はほとんど父が担当していたのです。 しかし学校の遠足などで弁当が必要な時は、母が一生懸命に作っ…

窓辺(フリー写真)

病院の窓辺から

ある病院に、頑固一徹で世を拗ねたような患者のお婆さんが居ました。 家族から疎まれていたためでしょうか。看護師さんが優しくしようとしても、なかなか素直に聞いてくれません。 …