大きなバラの花束
接客を何年か担当してくれていた優秀な女性スタッフが、その店を辞めることになった。
店長は、一生懸命仕事をしてくれた彼女に何かお礼がしたかった。
いよいよ彼女の最後の出勤の日が来た。
出勤して来た彼女に店長は、まずトイレ掃除を命じた。
もちろん素直な彼女は、一生懸命トイレを綺麗にした。
彼女がトイレを掃除している間、密かに店長は、店内に居るお客様の間を回り始めた。
「10年近く勤めてくれたスタッフの○○が、今日で辞めることになりました」
一本のバラをお客様に渡しながら、
「今、彼女がお客様の間を回りますから、どうかこの花を彼女に渡してもらえませんか?」
店内に居る30人近くのお客様が全て協力してくれた。
※
トイレ掃除を終えた彼女に、店長は次の指令を出した。
「全ての客席を回って、お客様に感謝の気持ちを込めてご挨拶してください」
彼女は客席を回った。
最後のお客様を回り終わった時、彼女の手には30本の大きなバラの花束が出来ていた。
そして、彼女の目には大粒の涙があった。
帰り際にお客様から、店長に
「何でこの店が人気があるのか解ったよ。
素晴らしいスタッフ達だ」
とお褒めの言葉があった。
このことをその女性スタッフは一生忘れないだろうし、お客様も忘れないだろう。