大好きな娘へ

先日、俺の一人娘が嫁に行った。
目に入れても痛くない――。
そう自信を持って断言できるほど愛してきた、一人娘だった。
※
結婚式で娘は俺の前に立ち、はにかみながら言った。
「お父さん、今までありがとう。大好きです。」
その瞬間、俺の胸の奥で何かが弾けそうになった。
相手側のご両親もいたし、娘の旦那もいた。
だからこそ、俺は笑顔で送り出してやろうと思っていた。
泣くまいと決めていた。
それなのに、気が付いたら涙と鼻水が止まらず、情けない笑顔を作ってしまっていた。
俺らしい送り出し方だった。
※
あの時、皺くちゃの赤ん坊だったお前は、初めて俺を見て泣き出したよな。
よちよちと立ち上がろうとしては転び、泣いて俺にしがみついてきたお前。
背中よりも大きなランドセルを背負い、カメラの前で誇らしげに笑ったお前。
手が隠れてしまうほど大きな制服に身を包み、照れくさそうに微笑んだお前。
俺の洗濯物と一緒に洗わないで、と母さんに怒鳴っていた反抗期のお前。
大好きな母さんがこの世を去ったあの日、病室の窓ガラスが震えるほど泣き叫んだお前。
最初は三回に一回くらいしか成功しなかった料理も、いつしか毎回美味しく作れるようになったお前。
そして、頬を赤らめ緊張しながら、初めて男(今の旦那)を家に連れて来た時のお前の姿。
結婚式で「大好き」と言いながら、俺と同じように笑い泣きをしていたお前。
※
笑顔が母さんそっくりになった娘が、ついに嫁に行ったよ。
純白のウェディングドレスを着たお前は本当に綺麗だった。
若い頃の母さんに瓜二つで、懐かしくて胸が熱くなったよ。
母さん、俺も娘も元気にやってるから、心配するなよ。
あの子はきっと幸せになる。俺が保証する。