チョコをくれたお姉さん

公開日: 心温まる話

チョコレート(フリー写真)

少し嬉しかった話。

去年の冬、高校受験もラストスパートの時の話。

中学の成績はなかなかだったから、志望校は進学校にした。

しかし中学3年生になってから全然成績が上がらない、と言うか下がる一方。

それは当たり前。受験前なのに1日2時間勉強すれば良い方だったから。

流石にまずいと思い始めて真面目に勉強するようになったけど、やはり始めるのが遅かった。

成績が全く上がらない。

自業自得だけど、思い直してからは人並み以上に勉強していたから、

「何で上がらないんだろう。私なんて…」

という感じで、もう軽く鬱っぽかった。

母子家庭だから、私立にはなるべく行けない。

でも成績は上がらない。

上がったとしても褒めてくれる人も誰も居ない。

親は仕事でいつも居ないし。

そして、冬のある日のこと。

もう何か全てどうでも良くなり、高校に行ければもういいや、という気持ちになっていた。

そんな感じで過去問をコンビニでコピーしていたら、入って来たお姉さんもどうやらコピー機を使うみたい。

過去問のコピーは時間がかかるから、その人に譲った。

それでまたコピーし始めていたら、そのお姉さんが来て、チョコを差し出した。

『へ?』という感じでボーッとしていたら、

「私も今年大学受験なんだ!あなたは高校受験かな? 過去問コピーしてたから、頑張ってるんだなあって思って!

辛いかもしれないけど、頑張ってね!思い詰めないで、偶には休んでもいいんだよ!チョコでも食べてさ!」

それだけなんだけど、何だか凄く嬉しくて。

頑張ってね、なんて言われたのもそう言えば始めてで。

チョコを受け取ってさよならした後、少し泣いてしまった。

そのチョコは凄く甘くて、何だか気持ちが変わって行く気がした。

その日から、ますます勉強した。

その日から、お姉さんのくれたチョコが好きになった。

お姉さんのおかげで、もう一回やる気を取り戻せた。

今は、その志望校に通っている。

お姉さん、元気かな…。

ありがとう!!

関連記事

ハンバーグ(フリー写真)

幸せな食卓

結婚して子供が出来て、ホカホカした食卓にみんな笑顔で並んでたりして、時々泣きそうなほどの幸せを噛み締める。 荒みじんの玉葱が入ったでっかいハンバーグや、大皿一杯の散らし寿司。妻と…

蒸気機関車(フリー写真)

まるで紙吹雪のように

戦後間もない頃、日本人の女子学生であるA子さんがアメリカのニューヨークに留学しました。 戦争直後、日本が負けたばかりの頃のことです。人種差別や虐めにも遭いました。 A子さ…

教室の机(フリー写真)

丸坊主だらけの教室

中学生の弟が、学校帰りに床屋で丸坊主にして来た。 失恋でもしたのかと聞いたら、小学校からの女の子の友達が今日から登校するようになったからだ、と言う。 彼女は今まで病気で入院…

カップル(フリー写真)

僕はずっと傍に居るよ

私は昔から、何事にも無関心で無愛想でした。 友達は片手で数えるほどしか居らず、恋愛なんて生まれてこの方、二回しか経験がありません。 しかし無愛想・無関心ではやって行けないご…

手を握る(フリー写真)

仲直り

金持ちで顔もまあまあ。 何より明るくて突っ込みが上手く、ボケた方が 「俺、笑いの才能あるんじゃね」 と勘違いするほど(笑)。 彼の周りには常に笑いが絶えなかった…

卵焼き(フリー写真)

とうちゃんの卵焼き

この前、息子の通う保育園で遠足があった。 弁当持参だったのだが、嫁が出産のため入院していたため、俺が作ることになった。 飯を炊くくらいしかしたことがないのに、弁当なんて無理…

サイコロ(フリー写真)

あがり

俺は小さい頃、家の事情でばあちゃんに預けられていた。 当初は見知らぬ土地に来てまだ間も無いため、当然友達も居ない。 いつしか俺はノートに、自分が考えたすごろくを書くのに夢中…

瓦礫

再建の約束

太陽の光がほんのりと残骸の上を照らしていた。災害により変わり果てた風景の中、一つの臨時の避難所が静かな緊張感を持っていた。 「若者の代表として、一つだけ言いたいことがあります……

色鉛筆で描かれた線(フリー写真)

弟の物語

私の家族は、父、母、私、弟の四人家族。 弟がまだ六歳の時の話。 弟と私は十二才も歳が離れている。凄く可愛い弟。 だけど私は遊び盛りだったし、家に居れば父と母の取っ組み…

飛行機雲(フリー写真)

きっと天国では

二十歳でヨーロッパに旅をした時の実話をいっちょう。 ルフトハンザの国内線に乗ってフランクフルト上空に居た時、隣に座っていたアメリカ人のじい様に話し掛けられた。 日本は良い国…