涙の中の絆

廊下

僕は小さい頃、両親に捨てられ、孤独な日々を過ごしていた。

「施設の子」「いつも同じ服を着た乞食」という言葉が常に僕を追いかけた。

同級生と遊びたくても、その家の親に拒まれることが日常だった。

僕は自分が汚い服を着ていても、人を傷つけたり、盗んだりはしていない。

両親がいないのは、僕のせいではない。

でも、僕を理解してくれる人はいなかった。

独りでいることが、一番傷つかない方法だと思っていた。

高校に入学しても、僕の机には酷い言葉が書かれていた。

立ち尽くす僕の前から、机がなくなった。

クラスの人気者、Yが僕の机を持ち上げ、廊下に出て行った。

技術室へ行くと、彼は紙やすりで落書きを消し始めた。

「つまんない事に負けんなよ」と彼は言い、黙々と作業を続けた。

「放課後にもう一回ここでニス塗ろうぜ。そしたら元通りだ」と言って彼は笑った。

その笑顔に、僕は感動して泣いた。

Yは照れ笑いを浮かべながら、僕を励ましていた。

Yは今、幸せな人生を歩んでいる。

彼がいなければ、僕は今の自分を見つけることはできなかっただろう。

直接言えないけれど、彼の幸せを心から願っている。

彼は僕にとってかけがえのない親友だ。

彼の優しさに対する感謝は、言葉では表現できない。

関連記事

結婚式(フリー写真)

式場の奇跡

当時付き合ってた恋人(現在の嫁)が突然、心因性発声障害という病に罹りました。 当日は遊びに行く予定だったのですが、彼女の方からLINEで断りのメッセージ。 どんな些細な事で…

空(フリー写真)

神様がくれたミッション

私は都内でナースをしています。 これは二年程前の話です。 ある病院で一人の患者さんを受け持つことになりました。 22歳の女性の患者さんです。 彼女は手遅れの状態…

炊き込みご飯

愛のレシピ

私が子供の頃、母が作る炊き込みご飯は私の心を温める特別な料理でした。 明言することはなかったが、母は私の好みを熟知しており、誕生日や記念日には必ずその料理を作ってくれました。 …

女の子

天に向かっての約束

7ヶ月前に妻を亡くし、初めて迎えた娘の4歳の誕生日。 今日は休みを取って朝から娘と二人で妻の墓参りに出かけた。妻の死後、娘は毎日「ままにあいたい」「ままかえってこないの」と泣い…

カップル

君への罪滅ぼし

高校二年の終わり、図書館で偶然隣に座った君に、僕は一目惚れをした。 僕はそれから学校が終わると駆け足で図書館に通い、いつも君を事を探していた。 勇気を出して話し掛けてみた…

カップル

ふたりの幸せのかたち

もう五年も前のことになる。当時、俺は無職だった。 そんな自分に、ひとりの彼女ができた。きっかけは、彼女の悩みをたまたま聞いてあげたことだった。 正直なところ、最初は他人事…

マラソン

継承されるタスキ

小さな頃、親父と一緒に街中をよく走ったものだ。田舎の我が町は交通量も少なく、自然豊かで、晴れた日の空気は格別だった。 親父は若い頃、箱根駅伝に出場した経験がある。走るのが好きで…

手紙

君の手紙、僕の手紙

先日、小学5年生の娘が何かを書いているのを見つけた。 それは、亡き妻への手紙だった。 「ちょっと貸して」 そう言って、そっと中身を見せてもらった。 まだ拙い文…

赤い薔薇(フリー写真)

赤い薔薇の花束

数年前にお父さんが還暦を迎えた時、家族4人で食事に出掛けた。 その時はお兄ちゃんが全員分の支払いをしてくれた。 普段着ではなく、全員が少しかしこまっていて照れくさい気もした…

犬(フリー写真)

コロの思い出

うちにはコロという名前の雑種の犬が居ました。 白色と茶色の長い毛がふわふわしている犬でした。 私が学生の頃は学校から帰って来る時間になると毎日、通学路が見える場所に座り、遠…