公園での約束

公園

芸人の江頭さんが公園でロケをしている時、隣の病院から来た車椅子の女の子がその様子を眺めていました。ロケが終わると、女の子は「つまらねーの」と小声で呟きました。

江頭さんが聞き返すと、「だって全然面白くないんだもん」と女の子は再び言いました。それを聞いた江頭さんは、「なら、お前が笑うまで毎日ここでネタを見せてやろうか」と宣言しました。

江頭さんは約束どおり、毎日仕事の合間を縫っては公園に現れ、女の子にネタを披露し続けましたが、女の子を笑わせることはできませんでした。

約一ヶ月後、毎日のように公園に来ていた女の子が突然姿を消しました。心配になった江頭さんは、一週間ぶりに公園に現れた女の子にいつものようにネタを見せたところ、女の子は初めて少し笑いました。

日が暮れると、江頭さんは「また、明日も来るから、ちゃんと待ってろよ」と言いましたが、女の子は「勝手に来れば!!」と応じました。

翌日、女の子は公園に来ませんでした。心配した江頭さんは病院へ行き、女の子が容体が悪化し昏睡状態で別の病院に移されたことを知りました。看護婦から渡された日記には「大好きな芸人、江頭」と記されていました。

十年が経った今でも、江頭さんは月に一度その公園を訪れ、女の子のために花を手向けながら一人でネタを披露しています。

関連記事

教室

思春期の揺れる心

中学1年生のころ、私の身近にはO君という特別な存在がいました。 私たちは深く心を通わせ、漫画やCDの貸し借りを楽しんだり、放課後や週末には図書館で学び合ったりしていました。 …

オムライス(フリー写真)

本当の友達

二十年ほど前の話。 当時、俺の家は片親で凄く貧乏だった。 子供三人を養うために、母ちゃんは夜も寝ないで働いていた。 それでもどん底の生活だった…。 俺は中学を卒…

老夫婦(フリー写真)

夫婦の最期の時間

福岡市の臨海地区にある総合病院。 周囲の繁華街はクリスマス商戦の真っ只中でしたが、病院の玄関には大陸からの冷たい寒気が、潮風となって吹き込んでいたと思います。 そんな夕暮れ…

夫婦(フリー写真)

奥さんの日記

嫁の日記を盗み読みしたら、いつも昼飯は納豆ご飯やお茶漬けしか食べていないことが判った。 友達とファミレスに行くのも月に一度と決めているらしい。 俺に美味しい料理を食べさせた…

バスの車内(フリー写真)

悪意と善意

10歳の息子がある病気を持っており車椅子生活で、更に投薬の副作用もあり一見ダルマのような体型。 知能レベルは年齢平均のため、尚更何かと辛い思いをして来ている。 ※ …

食堂

美味かったな

二十年前のことです。当時、私たち家族は母一人による育てられ、非常に厳しい経済状況にありました。母は私たち三人の子供を育てるため、夜も眠らずに働いていましたが、それでも生活は極貧でした…

キッチン(フリー写真)

最高に幸せなこと

私は小さな食堂でバイトをしています。 その食堂は夫婦と息子さんで経営。バイトは私だけの合計四人で働いています。 基本的に調理は旦那さんと息子さんがやっているのですが、付け合…

電車の車内(フリー写真)

思いやりの紙片

学生時代から長く付き合い、結婚を考えていた彼と別れました。 彼は一年も前から、職場の年上の女性と付き合っていたのです。 その女性から結婚を迫られ、もう既に彼女のご両親とは…

信号(フリー写真)

素直な感謝の気持ち

今日、近所の交差点で車に乗り信号待ちをしていると、前方の右折車線でジリジリ前進している車がいた。 明らかに『信号が青になった瞬間に曲がっちまおう』というのが見え見え。 この…

野球ボール(フリー写真)

父と息子のキャッチボール

私の父は高校の時、野球部の投手として甲子園を目指したそうです。 「地区大会の決勝で9回に逆転され、あと一歩のところで甲子園に出ることができなかった」 と、小さい頃によく聞か…