天国のおじいちゃんより

公開日: 家族 | 心温まる話 | 祖父母

桜(フリー写真)

中学卒業が間近に迫ったある日のことです。

今までお世話になった人に手紙を書きましょう、という授業がありました。

みんなは友人や部活の顧問宛に一生懸命、手紙を書いていました。

自分は最初『今どき手紙かぁ』と思い馬鹿にしていたけど、何となく書かなければいけないような気がしました。

そして半年前に亡くなったおじいちゃん宛に手紙を書きました。

まあ、届くはずはないのだけれど。

最期の時、意識がなく寝たきりだったおじいちゃんに伝え切れなかった感謝の気持ち。

そして高校の制服姿を見せたかった気持ち。

それらの気持ちを手紙にありったけ込めて、僕はおばあちゃんの家へ向かいました。

普段からあまり顔も見せないのに、おばあちゃんは笑顔で迎え入れてくれました。

僕は奥の方の部屋にある仏壇にそっと手紙を置き、手を合わせてその日は帰りました。

それから数日が経ち、おばあちゃんが珍しく家まで俺を訪ねて来ました。

「○○ちゃん、おじいちゃんから返事が来たで」

さらっと言うものだから、とても驚きました。

取り敢えず手紙を受け取り、おばあちゃんが帰った夜、おそるおそる読んでみました。

便箋は二枚でした。内容は、

『僕の身を案じている』

『僕のじいちゃんへの感謝は日頃から伝わっていた』

『○○の制服姿は誰よりも格好良かった』

『枕元で一生懸命、色々な話をしてくれたのに、返事もしてあげられなくてすまない』

二枚目を見ると、

『お前の夢は叶う』

と大きく書かれていた。

追伸には、

『おばあちゃんに代筆を頼みました』

と震えた字で記されていました。

その手紙は本当におじいちゃんが書いたのか、それともおばあちゃんが書いたのかは分かりません。

しかしそんなことは関係なく、その日は涙が止まりませんでした。

関連記事

警察官の方(フリー写真)

人と人との出会い

何年か前の、5月の連休中のこと。 あるご夫婦がライトバンのレンタカーを借り、佐賀から大分県の佐伯(さいき)市を目指して出掛けた。 佐伯市からは夜23時に四国行きのフェリーが…

朝焼け(フリー写真)

天国の祖父へ

大正生まれの祖父は、妻である祖母が認知症になってもたった一人で介護をし、祖母が亡くなって暫くは一人で暮らしていた。 私が12歳の時に、祖父は我が家で同居することになった。 …

父と娘(フリー写真)

娘の望み

彼は今日も仕事で疲れ切って、夜遅くに帰宅した。 すると、彼の5歳になる娘がドアの所で待っていたのである。 彼は驚いて言った。 父「まだ起きていたのか。もう遅いから早く…

金魚すくいをする女の子(フリー写真)

兄妹の金魚すくい

俺が打っている店(金魚すくい)に、兄妹と思われる7歳ぐらいの女の子と、10歳ぐらいの男の子がやって来た。 妹は他の子供たちが金魚すくいをしているのを興味津々で長い間見ていたが、や…

夫婦の手(フリー写真)

大事なメール

嫁が風呂に入っている時に携帯を見てしまった。 メールボックスには俺が送った『今から帰る』というような、くだらないメールばかり。 でもフォルダがあって、そこにメールが一杯貯ま…

男の子

父の小さな優しさ

子供の頃、母が入院していた時期があって、そのせいで遠足の準備がうまくできなかったんだ。一人じゃお菓子も買いに行けなくて、家にあった食べかけのお茶菓子をリュックに詰め込んだのを覚えてる…

ウィスキー(フリー写真)

悲しい時は泣くんだよ

家内を亡くしました。 お腹に第二子を宿した彼女が乗ったタクシーは、病院へ向かう途中、居眠り運転のトラックと激突。即死のようでした。 警察から連絡が来た時は、酷い冗談だと思い…

バスの車内(フリー写真)

悪意と善意

10歳の息子がある病気を持っており車椅子生活で、更に投薬の副作用もあり一見ダルマのような体型。 知能レベルは年齢平均のため、尚更何かと辛い思いをして来ている。 ※ …

ビール(フリー写真)

恐かった父

私の父は無口で頑固で本当に恐くて、親戚中が一目置いている人でした。 家に行ってもいつもお酒を飲んでいて、その横で母が忙しなく動いていた記憶があります。 ※ 私が結婚する事にな…

裁縫(フリー写真)

妹に作った妖精衣装

俺には妹が居るんだが、これが何と10歳も年が離れている。 しかも俺が13歳、妹が3歳の時に母親が死んでしまったので、俺が母親代わり(父親は生きているから)みたいなものだった。 …